園芸学会雑誌
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39 巻, 1 号
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  • 神吉 久遠, 矢島 邦康
    1970 年 39 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    いわゆる温州ミカンの異常落葉の原因と対策を明らかにするため, 異常落葉園の土壌を用いてはち試験を行ないつぎのような結果を得た。
    1. 植物体のマンガンは細根に著しい集積が見られる。しかし, マンガン含量が6,500ppm をこえても細根の腐敗は全く認められなかつた。
    2. 細根のマンガン含量と土壌の水溶性マンガン含量との間に相関が認められる。
    3. 葉のマンガン含量も土壌の水溶性マンガン含量と相関があり, また, 細根のマンガン含量とも相関が認められる。
    4. 褐色の斑点の発現と葉のマンガン含量との間には相関が認められる。しかし, この場合落葉はきわめて少なく, マンガン含量と落葉との関連は見られなかつた。
    5. 石灰の施用による土壌pHの上昇に伴つて水溶性マンガンが減少し′生長量の増加, マンガン含量の低下など顕著な効果が認められ, 石灰の多量施用の悪影響は全く見られなかつた。
    6. 以上の結果から, この異常落葉は土壌の水溶性マンガンの増加に伴うマンガンの過剰吸収がおもな原因であり, 対策としては石灰類の施用による土壌pHの上昇が最も有効と考えられる。
  • 花粉稔性の回復に関係する葯内の炭水化物の代謝および酵素活性に及ぼす温度の影響
    楊 緒壬, 中川 昌一
    1970 年 39 巻 1 号 p. 6-20
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカンの花粉稔性は, その発達過程における温度条件によつて差異があり, 温暖条件のもとでは花粉稔性が高められることが知られている。本研究は温州ミカンの鉢植5~6年生樹を用い, ガラス室内に設けたビニルハウス内に入れ, その最低温度を10°C, 15°C, 20°C および25°C に調節し, 花蕾の発育期間中異なる温度条件において, 小胞子および花粉の発達と退化の様相を調査するとともに, 葯内の炭水化物の代謝および酵素活性について実験を行なつた。
    温度処理した温州ミカンの花粉稔性を露地に比べると, 花粉稔性の上昇率は15°C 処理区では14%, 20°C では23%であつた。しかし, 25°C では花粉稔性の上昇率はわずか6%であり, また花蕾は小さく, 弱々しい外観を示し, 開花後2~3週間以内に子房や, 幼果が全部離脱した。したがつて温州ミカンの稔性を上昇させる温度条件は花粉稔性の上昇率と花蕾の発育の両方を考慮すれば, 花蕾から開花までの期間中, 最低温度15~20°C が適当であると考えられた。
    温度処理によつて稔性花粉が増加することは, 加温によつて液胞期およびそれ以後の花粉の発達が進行し, デンプンを集積した小胞子の数が増大するためである。高温下で葯内のアミラーゼ, マルターゼ, インベルターゼ, ヘキソキナーゼおよび小胞子内のデンプン合成酵素系の活性を測定した結果それが高まつていたことから, 葯壁に貯蔵されていたデンプンが多量に分解され, 小胞子に十分な栄養を供給できるようになる。また葯内の解糖経路からも多量のエネルギーが放出されることが考えられる。この結果, 液胞をもつた飢餓状態の小胞子はタペート細胞などを含む葯壁から栄養分を吸収して, 細胞質内の液胞を排除し, 液胞期およびそれ以後の発育過程を円滑に進め, 液胞を消失するとともに, 栄養物質としてデンプンを十分に集積して稔性花粉となり, 花粉稔性を高めたものと考えられる。
  • 第2次生長に伴う木部組織の形成について
    川田 信一郎, 池田 富喜夫
    1970 年 39 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    The rays in the xylem of citrus trees were classified into two types (Fig. 1 and 3). One was uniseriate and the number of cells in the height (the length of axial direction) of tangential section of the ray was usually 1 or 2 through successive stages of the secondary growth. Another was uniseriate in the earlier stage of annual ring development and underwent change to multiseriate in the later stage. Many papillae were found not only on surface of the walls of the ray cells, but also on surface of the walls of parenchymatous cells, fibers and pith cells (Fig. 9, 10 and 13). Such cells appeared to be interconnected with each other morphologically by the papillae. The number of papillae on the outer or inner tangential walls of such cells were more than those on the upper or lower transverse walls. From these results it may be estimated that ray cells have some physiological interconnection in radial direction of secondary wood by the papillae.
    As mentioned in the previous paper18), abnormal tissues associated with the stem pitting were formed in ray initials of the cambium instead of differentiation into normal multiseriate ray cells. Furthermore the abnormal tissues were found to be more remarkably in parenchymatous tissues than in fibrous tissues of the wood. From these results, it may be assumed that the formation of abnormal tissues is related with the differentiation of parenchymatous cells during the secondary growth. Concerning the general pattern of variation in annual wood ring, it was clarfied that during secondary growth the cambium produced almostly fibrous cells in summer season and differentiated parenchymatous cells in winter season.
    These facts and assumption suggest that the abnormal tissues and parenchymatous tissues are formed in the same season and may be influenced by physiological condition of the cambium. In other words, the stem pitting phenomenon on the wood of citrus trees might be depend on cambial condition in a given season of a year.
  • TH-656 の作用性の検討
    岩崎 桂三, 萩本 宏, 野間 豊, 永沢 勝雄
    1970 年 39 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. NAA を azolide にした TH-656 が, インゲン第1葉葉柄の葉枕の離脱に及ぼす作用を NAA と比較検討すると共に, 温州ミカンの摘果効果について検討した。
    2. インゲン葉柄切片の proximal end に処理した場合, TH-656 は葉枕の離脱を NAA とは反対に阻害する作用を示した。そして, TH-656 は濃度を 10-12M まで下げても, NAA にみられる離脱の促進作用はみられなかつた。
    3. 葉柄切片からの葉枕の離脱に及ぼす,TH-656 および NAA の接触時間の影響についてみたところ, proximal end に処理した場合, TH-656 は接触時間の増加にしたがつて離脱を阻害した。しかし, NAA は3時間の接触では離脱を阻害したが, 6時間以上の接触ではむしろ促進した。
    4. Distal end に処理した場合, TH-656, NAA 共に葉枕の離脱を阻害した。
    5. TH-656 を早生温州ミカンに散布した場合の摘果効果は, その濃度によく比例しており, 散布濃度を適宜選ぶことによつて, 摘果を任意に調節することのできる, 優れた摘果剤となる可能性を示している。
    6. TH-656 は早生温州ミカンの満開後10日および30日散布のいずれにおいても, 高い摘果効果を示した。すなわち, TH-656 の 50ppm 処理と NAA 200ppm 処理とはほぼ同等の効果, また, TH-656 の 100ppm はNAA 300ppm とほぼ同等の効果を示した。
    7. TH-656 の高濃度 (200~400ppm) 処理区は全摘果の状態を示した。しかし, 枝, 葉および果実に対する薬害は認められなかつた。
  • 秋の摘葉および強剪定がピーチシンの摘果効果に及ぼす影響
    佐藤 幹夫
    1970 年 39 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 1963年当時10年生白鳳3樹, 同じく14年生白鳳3樹を用い, 同じ樹を1963年より1965年までの3年間,1965年にはさらに16年生樹4樹を加えて, ピーチシンによる摘果試験を行なつた。10年生樹については各樹とも前年の9月下旬あるいは10月中旬に樹の半分を摘葉し, 翌春満開後2~3日にピーチシン200ppm溶液を, 摘葉部分, 放任部分にそれぞれ散布した。14年生樹については, 摘葉を行なわず, 満開後2~3日にピーチシン200ppm溶液を散布した。
    3年間の結果をとりまとめると, 対照 (無散布) 区の結実歩合は無摘葉樹で82.1%, 摘葉樹で摘葉部分78.1%, 放任部分77.1%と, 摘葉樹と無摘葉樹間でほとんど差がなかつた。
    ピーチシン散布区においては, 無摘葉樹72.8%に対して, 摘葉樹放任部分49.1%, 摘葉部分46.3%と摘葉樹の結実歩合が低く, 摘葉樹はピーチシンにより強く摘果された。
    一方, 摘葉樹内においては, 対照区について放任部分, 摘葉部分ほぼ同じ結実歩合を示した。ピーチシン散布区についても摘葉部分, 放任部分ほぼ同じで, 樹を半分摘葉した場合には, 摘葉, 放任両部分間に摘果効果の差はなかつた。
    2. 6年生 (1964年当時) 白鳳6樹のうち3樹を強く剪定し, 他の3樹には中程度の剪定を行ない, 各樹にピーチシン200ppm, 400ppm溶液を散布した。
    2年間の成績をまとめると対照区では, 中剪定樹の結実歩合73.4%, 強剪定樹67.3%と強い剪定により結実歩合が低下した。ピーチシン散布区においても, 200ppmで中剪定樹57.0%, 強剪定樹46.3%, 400ppmで中剪定樹48.9%, 強剪定樹36.1%と強剪定樹は結実歩合が低くなつた。ピーチシンによる摘果効果は, 強剪定により対照区の結実歩合が低下したのに対応してピーチシン散布区の結実歩合も低くなつたものと推定される。
  • クリのクリタマバチ抵抗性とクリの芽の組織化学
    松井 鋳一郎, 鳥潟 博高
    1970 年 39 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    クリタマハチ感受性および抵抗性品種の芽およびそこに形成されるクリタマバチによるゴールについて組織化学的な観察を行ない, 両者の相異を明らかにした。
    1. 両種にはゴールおよびクリタマバチ幼虫の大きさについて顕著な差がある。しかし幼虫は抵抗性品種でも11月上旬において相当多数のものが生存している。
    2. 核酸とくにピロニン染色によるRNAがゴールで多い。またゴール分裂層では仁および核が大型化している。ときには多核細胞, 多仁の核がみられる場合がある。細胞質も同様に多い。この現象は抵抗性が増すにつれみられなくなる。
    3. 感受性品種のゴール, とくにその分裂層ではヒストン, インドールの反応などタンパク質反応が大で, この合成が盛んである。
    4. 炭水化物について感受性品種のゴールことに分裂層はセルロースの沈澱が悪い。酸性硝酸銀による反応は2種類あり, 感受性品種と抵抗性品種のゴールでは反応が異なる。
    5. デヒドロゲナーゼとコハク酸脱水素酵素活性は感受性品種のゴールで顕著であるが, 抵抗性品種のゴールには全くないかほとんどない。
    6. 感受性品種のゴールの分裂層はべーオキシダーゼおよびNADIオキシダーゼの活性が強い。ゴール柔組織のそれらの活性は感受性品種ではパーオーキシダーゼの活性が大で, NADIオキシダーゼの活性は弱い。抵抗性品種はこの逆である。
    7. 抵抗性品種のゴールは抵抗性の弱いものでも50%以上, 強いものになると90%以上がかつ変を起している。このかつ変はカデコールタンニンが関与している。ボリフェノールオキシダーゼは抵抗性品種の方がいく分活性が大である。
  • アローラ J.S., シン L.R.
    1970 年 39 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    この実験は1966および1967の両年度にわたって, バナラス•ヒンズー大学農学部において, グアバの品種“Allahabad Safeda”を用いて行なった。すなわち, 尿素, 重過リン酸および硫酸カリを0.0, 1.0, 2.0%の3段階で, それぞれ単用および組み合わせで散布した。尿素を単用で散布すると, 枝の伸長がよくなり9月15日における葉数が有意に増加していたが, 特に顕著な増加は11月15日および1月11日の調査時点で認められた。また, 両年度ともに, 尿素を散布することによって果実の収量を増すことができた。さらに, 果重, 果径, ビタミンCおよび可溶性固形物含量についても有意な改善効果が認められ, また, 遊離酸の減少や還元糖, 非還元糖およびペクチン質の増加の面にもかなり有効であった。しかし, 重過リン酸や硫酸カリの散布は単用では効果がなかったが, これらを併用すると相当高い効果が認められた。
  • 岩崎 文雄
    1970 年 39 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ダイコンの各生態型に属する品種を用いて, 春化処理に伴う生長点の形態的•組織化学的変化を調べた。
    2. その結果, 春化処理をすると生長点の形の変化のおこる時期と Tunica 層の層数の変化のおこる時期が早められることがわかつた。
    3. 生長点部位の組織化学的変化も春化処理をすると正常栽培下での花芽形成直前のような反応に変わることが認められた。
    4. 春化処理は生育過程中の栄養生長期間を短縮させ, 直ちに生殖生長相に誘導するということが生長点の形態的•組織化学的変化の面からもいうことができる。
  • 崎山 亮三
    1970 年 39 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. トマト果実 (福寿2号) の発育中における酸含量の増加が果実内で生成された酸によるのか, 茎葉から流入した酸によるのかを明らかにするため, 着色開始以前の種々の発育段階で果実を切り離して20°C下におき, その後の酸含量の変化を調べた。それによると, 着色開始以前のいずれの時期に切り離しても, 全酸含量は高まり, 着色する頃にほぼ最大となつた。また着色開始時に切り離した果実を20°C下におくと全酸含量は低くなつた。これらの結果は果実が酸を生成する能力を有することを示すものと考えられた。
    2. 切り離した果実の酸含量の増加に塩基量あるいはカリ含量がどのように関与しているかを明らかにするため, カリ施用量を変えて栽培した株から開花後35日の果実を切り離し, 着色が始まるまで20°C下におき, その間に生ずる全酸含量の増加量と果実の塩基またはカリ含量との関係を調べた。それによると, 全酸含量の増加量は塩基含量またはカリ含量とほぼ比例する関係にあることがわかつた。
    3. 切り離された果実において全酸含量が高まるためには次の2つの条件が関与していると思われる。(1)果実の発育段階が同じであれば酸/塩基の比がほぼ等しく保たれていること, (2) 果実の発育が進むと, 酸/塩基の比が高くなり, また切り離された果実も, 生理的に発育を続けると考えられること。
  • 光条件の影響
    松尾 英輔, 福島 栄二
    1970 年 39 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    長日性キュウリ「彼岸節成」を供試し, 性分化に及ぼす光条件の影響について調べた。
    暗期の直前に赤外光を照射したところ, 9時間日長の場合は雄花分化が抑制された。日長と雄花分化との関係を調べたところ, 雄花分化は8時間前後の日長でもっとも著しく, それ以上および以下の日長では雄花節が減り, 雌花節が増加した。明期および補光期の光量をかえた場合, 光量が多いほど雌花節数が多く, 5lux以下の補光の影響は見られなかった。明期8時間後の4または8時間を赤色, 青色または赤外光で補光したところ, 4時間補光区よりも8時間補光区において雌花節数が多く, その際, 赤色光がもっとも有効であった。
  • 呼吸とポリフェノール含量の関係, ならびにそれらにおよぼすMHの影響
    佐藤 一郎, 田辺 賢二
    1970 年 39 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナガイモの褐変に関与するポリフェノール含量と, 芋の呼吸との関連を見出す目的で, 芋の生育に伴う呼吸の変化を調べた。
    またMHの茎葉散布処理が, 芋の呼吸ならびにポリフェノール含量におよぼす影響について, 実験を行なつた結果を要約すると次のようである。
    1) ナガイモの生育のおう盛な7月中旬から8月中旬にかけて, 芋の先端部の呼吸量は著しく多く, その後8月下旬~9月にかけて急激に減少した。この傾向は先報で示した芋先端部のポリフェノール含量の消長ときわめてよく一致した。
    2) 生育中のナガイモの茎葉に, MHを散布することにより, 芋の呼吸量は減少し, またポリフェノール含量も少なくなつた。。そして早掘芋特有の褐変は著しく軽減された。
    3) MH処理によつて, 掘り上げ後の芋のポリフェノール含量の増加はきわめて少なくなつた。この際, 無処理の芋はR. Q. が低下していくのに対し, 処理芋ではやや高まる傾向がみられた。
    4) 以上の結果より, ナガイモの呼吸とポリフェノール含量とは密接な関係にあることが想像された。一方, MHは糖代謝に直接的, あるいは間接的に関与し, 呼吸を不活化する結果, ポリフェノールの生成量が少なくなり, ひいては芋の褐変が軽減されるものと推察された。
  • 筒井 澄, 豊田 篤治
    1970 年 39 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. チューリップ種球根の貯蔵温度が, そのドロッパー形成におよぼす影響を明らかにするため, とくにドロッパー発生傾向の強い品種アペルドンを用いて, 貯蔵温度と貯蔵時期ならびに貯蔵温度と植付け時期との関係において, その影響を検討した。
    2. 貯蔵時期との関係では, ドロッパー形成には9月中旬以降の貯蔵温度が関係し, これ以前の温度は, ほとんど関係がない。試験した25°Cまでの範囲では, 貯蔵温度は高いほどドロッパーの形成を抑制する。植付け時期は, 一般におそくなるにつれてドロッパーの形成を抑制するが, 貯蔵温度が低い場合には, この抑制効果が見られない。北陸の自然貯蔵温度下では, 10月以降の温度がかなり低下するので, ドロッパーを形成しやすい材料では, 常に高率のドロッパー発生を見ることになるが, 本試験のような発生傾向のきわめて強い材料でも, 25°Cに貯蔵し, 植付けを11月20日までおくらせると, ほとんど完全にその形成をおさえることができる。
    3. ドロッパー形成の抑制程度は, 貯蔵中の球根内の幼芽の発達ならびに植付け後の初期生育の抑制程度とよく一致するので, 初期生育の抑制が, ドロッパー発生の抑制につながるものと考えられる。
    4. しかし, この初期生育の抑制は, 生育段階が進むにつれてかなり軽減し, また初期生育の抑制されたものは, 枯上り時期がやや遅れる傾向があるので, 最終的な球根収量にはそれほど大きな影響が見られず, ドロッパー抑制効果に比べて問題とならない。
    5. 高うねに条植えとしたうね肩の2条と内側の4条と比較すると, うね肩のほうが明らかにドロッパーの発生が多く, これには土壌の通気の良否が関係するものと考えられる。
  • γ線照射洋ナシ“バートレット”の呼吸量, エチレン生成量, 蛋白態N, 有機酸および RNA の消長
    茶珍 和雄, 山中 博之, 緒方 邦安, 加藤 勝一
    1970 年 39 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    洋ナシ“バートレット”の追熟に対するγ線の抑制効果を, 呼吸, エチレン生成, 有機酸, 蛋白態NおよびRNAの消長から追究した。250 Krad のγ線を照射した果実の炭酸ガス排出量とエチレン生成量の peak は通常無処理区に見られるより約3~4日遅延された。1000Krad のそれらは少なく, peak も認められなかつた。組織切片の炭酸ガス排出量に対するリンゴ酸ソーダの添加効加は照射によつて低下した。250 Krad 区の有機酸含量は他の区より少なかつた。なお, コハク酸は 1000Krad 区で蓄積する傾向にあつた。照射区の蛋白質の合成は抑制されるが, 250 Krad では徐々に回復し, 1000Krad 区では阻害された。RNA含量においては, 無処理区と 250 Krad 区で追熟中わずかに増加し, 1000 Krad 区では減少する傾向が見られた。これらの結果から, γ線の追熟抑制機作について考察した。
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