園芸学会雑誌
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チューリップのドロッパー形成におよぼす種球根貯蔵温度の影響
筒井 澄豊田 篤治
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1970 年 39 巻 1 号 p. 85-92

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抄録

1. チューリップ種球根の貯蔵温度が, そのドロッパー形成におよぼす影響を明らかにするため, とくにドロッパー発生傾向の強い品種アペルドンを用いて, 貯蔵温度と貯蔵時期ならびに貯蔵温度と植付け時期との関係において, その影響を検討した。
2. 貯蔵時期との関係では, ドロッパー形成には9月中旬以降の貯蔵温度が関係し, これ以前の温度は, ほとんど関係がない。試験した25°Cまでの範囲では, 貯蔵温度は高いほどドロッパーの形成を抑制する。植付け時期は, 一般におそくなるにつれてドロッパーの形成を抑制するが, 貯蔵温度が低い場合には, この抑制効果が見られない。北陸の自然貯蔵温度下では, 10月以降の温度がかなり低下するので, ドロッパーを形成しやすい材料では, 常に高率のドロッパー発生を見ることになるが, 本試験のような発生傾向のきわめて強い材料でも, 25°Cに貯蔵し, 植付けを11月20日までおくらせると, ほとんど完全にその形成をおさえることができる。
3. ドロッパー形成の抑制程度は, 貯蔵中の球根内の幼芽の発達ならびに植付け後の初期生育の抑制程度とよく一致するので, 初期生育の抑制が, ドロッパー発生の抑制につながるものと考えられる。
4. しかし, この初期生育の抑制は, 生育段階が進むにつれてかなり軽減し, また初期生育の抑制されたものは, 枯上り時期がやや遅れる傾向があるので, 最終的な球根収量にはそれほど大きな影響が見られず, ドロッパー抑制効果に比べて問題とならない。
5. 高うねに条植えとしたうね肩の2条と内側の4条と比較すると, うね肩のほうが明らかにドロッパーの発生が多く, これには土壌の通気の良否が関係するものと考えられる。

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