抄録
1. さし木中におけるさし穂内の栄養成分の動向を明らかにするために, ブドウ (品種デラウエア) を供試して, さし木後の新芽の生長および不定根の形成発育に伴うさし穂内の乾物ならびにN, P, K, Ca, Mg要素の移行分布を調査した。
2. さし穂の上半および下半, 新芽, 新根の4部に分けて乾物重量を測定し, それらの量比の推移をみたところ, 新芽や新根の発育に伴つて, さし穂の上半および下半の値はしだいに低下し, その傾向は下半において著しかつた。さし木100日後における新芽, さし穂上半, 下半, 新根中の乾物量比は, 1.9:4.1:3.4:0.6であつた。
3. 新芽や新根の発育に伴つて, さし穂内のN, P, K, Ca, Mgはそれらの新生組織への移行のために著しく減少した。各要素の分布量比から移行の様相を比較すると, 新芽の生長開始時に新芽部分に最も多く移行したのはPであり, ついでNやKが多かつた。また, 新根形成初期に新根部分に最も多く移行したのはKおよびMgであつた。いつぼう, これらの新生組織に最も移行の少なかつたのはCaであつた。
4. さし木100日後におけるさし穂中: 新生組織中の各要素の分布量比は, N 5.7:4.3, P 6.3:3.7, K5.1:4.9, Ca 6.5:3.5, Mg 5.0:5.0であつた。