園芸学会雑誌
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果樹の光合成作用に関する研究(第1報)
環境条件が光合成速度に及ぼす影響
天野 勝司日野 昭大東 宏倉岡 唯行
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1972 年 41 巻 2 号 p. 144-150

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抄録

1. 2年生のモモ (大久保), ブドウ (デラウェア), カキ (富有), イチジク (マスイドーフィン), クリ (筑波) および温州ミカン (南柑4号) を供試して, 同化箱を用いた通気法によつて光合成速度を測定した.
2. 同化箱への通気量を種々に変えて, 通気量と光合成速度との関係をみたところ, モモ, ブドウおよびクリでは毎分1l, また, カキ, イチジクおよび温州ミカンでは毎分2~3lで光合成速度は極大を示し, その後前者ではゆるやかに低下し, 後者ではほとんど変わらなかつた.
3. 各種果樹の光飽和点は, モモ, カキ, イチジク, クリおよび温州ミカンで約40klux, ブドウでは30kluxであり, 補償点は1~3kluxの範囲にあつた.
生育期間中の受光量が低下するとともに, 葉面積は著しく増加したが, 葉身およびさく状組織の厚さ, 気孔数, 光合成速度および光飽和点は低下した.
4. 葉温が光合成速度に及ぼす影響をみたところ, ブドウおよび温州ミカンは25°Cで, また, モモは30°Cで最大となり, それ以上の温度になると光合成作用が低下する傾向を示した. いつぼう, カキおよびクリでは20°Cのときに最高となり, それ以上では, 温度の上昇に伴つて光合成速度の急激な低下を示した. また, イチジクの場合には, 30°Cまではほとんど変わらず, 30°C以上になると急激に低下した.

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