抄録
植物生長調節物質によるモモの単為結果誘起について, 布目早生, 砂子早生, 倉方早生, 大久保, 高陽白桃, 白桃の6品種を用いて調査した.
モモ大久保の単為結果はGA3によつてのみ誘起され, GA7, IAA, カイネチン, IAAとカイネチンの混合, の各処理では誘起されなかつた.
さらに, GA3による単為結果誘起に品種間差異が認められ, 調査した6品種のうち砂子早生, 大久保, 白桃の3品種はGA3により単為結果が誘起され, 残りの品種では誘起されなかつた.
GA3による単為結果率はGA3の処理濃度が高いほど, また処理の回数が多いほど高かつた. 単為結果の果実肥大におよぼすGA3の影響は処理回数が多くなるほど大であつたが, 処理濃度による差異は顕著でなかつた.
GA3により単為結果した果実は収穫時の果実重量および果実径において有種子果より劣つたが, 他の形質は有種子果と変らなかつた.
GA3の処理時期の差異がモモ大久保の単為結果誘起におよぼす影響をみた結果, 除雄後30日以内にGA3を与える必要があつた.
GA3により単為結果した果実の中果皮の厚さは有種子果と変らなかつたが, 細胞層数および細胞径において差異が認められた. また, 核の大きさ, 核の組織の厚さおよび内腔の大きさでは有種子果より劣つた.