園芸学会雑誌
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貯蔵ピーマン果実の低温障害に関する生理化学的研究 (第5報)
低温障害に伴なう種子フェニルアラニン•アンモニアリアーゼ活性の変化およびエチレン処理がフェニルアラニン•アンモニアリアーゼ活性におよぼす影響
小机 信行緒方 邦安
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1972 年 41 巻 3 号 p. 322-326

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抄録
ピーマン果実を低温下 (0~6°C) に貯蔵すると短時間で種子のかっ変が生ずる。このかっ変に関与する物質および phenylalanine ammonia-lyase (PAL), tyrosine ammonia-lyase (TAL) などの酵素活性の変化, さらにこれらの基質, 酵素に関与するリグニンについてはすでに報告した。
本研究はピーマン種子のPAL活性の変動を経時的に追跡するとともに, ピーマン果実のエチレン生成量を調べ, さらにエチレン処理したピーマン種子のPAL活性を測定し, エチレンと低温障害発生との関係を考察したものである。
(1) Phenylpropanoids の key enzyme として知られるPAL活性は, 1°C区が貯蔵18時間後に最大値となり以後この活性を持続したのに対し, 20°C区では, 12時間以後の活性は1°C区より低かった。
(2) 低温障害と密接に関係すると思われるエチレン生成量は1°C区において, PAL活性にさきだって増加し, 一時期には20°C区の生成量を上まわった。
(3) 1°C, 20°C貯蔵した果実にエチレン処理 (300ppm) を行なうと, 1°C区ではPAL活性の顕著な増大がみられたが, 20°C区では, ほとんど変化はなかった。
(4) 以上の結果から, ピーマン種子のPAL活性が誘起されるのは低温処理とともに, エチレンの存在がその一因となり, PAL活性の増大をきたすものと推測した。
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