抄録
本研究は, トマト果実におけるグルタミン酸とγ-アミノ酪酸の代謝を, アイソトープを用いて検討するとともに, 追熟に伴うその代謝活性の変化について調べた.
トマト果実切片を用いて, L-glutamic acid-14C(U)とγ-aminobutyric acid-1-14Cの変転を測定した結果, グルタミン酸は脱炭酸され, γ-アミノ酪酸となり, γ-アミノ酪酸はTCA cycle 中の酸に代謝されることが認められた. さらにその代謝速度は未熟な時期に速く, 完熟すると低下することがみられた. TCA cycle の酸としてコハク酸とリンゴ酸に14C-activity の高かつたことから, グルタミン酸→γ-アミノ酪酸→(コハク酸セミアルデヒド)→コハク酸の代謝経路が考えられ, この経路がトマト果実の成熟追熟過程においてTCA cycle の by-pass として重要な役割を果しているものと推定した.