園芸学会雑誌
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ハイドランジアの花色とアルミニウムおよびリン含有量の消長について
岡田 正順大川 恭子
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1974 年 42 巻 4 号 p. 361-370

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抄録

1. ハイドランジアの緋紅色の品種である‘キングジョージ’と‘プリマ’を苗の育成期間中は酸性土壌で生育させ, アルミニウムとリンの含有量の消長を調べた.
2. 苗の育成期間中吸収蓄績されたアルミニウムとリンは, 12月中旬の落葉によつてその75~80%が失われた.
3. 温室に搬入し促成栽培を行なうときに栽培用土を酸性土壌とアルカリ性土壌とに分け, 酸性土壌区およびアルカリ性土壌区のアルミニウム, リンの含有量および花色の変化について調べた.
4. アルカリ性土壌区の花色は, 苗の育成期間中酸性土壌で栽培されたにもかかわらず鮮緋紅色になつた. 酸性土壌区では濃青色ないし青紫色になつた.
5. 吸収スペクトルの最大吸収波長 (λ. max.) は酸性土壌区の青色花がアルカリ性土壌区の桃色花より40mμ長波長に移動した.
6. アルミニウムは酸性土壌区の方がアルカリ性土壌区より高い含有率を示した. 酸性土壌区の花のアルミニウム含有率はアルカリ性土壌区の2.3~3.8倍であつた.
7. リン含有率はアルカリ性土壌区の方が酸性土壌区よりも高かつた.
8. アルミニウムとリンの濃度比 (Al%/P%) はアルカリ性土壌区はきわめて低い値となり, 酸性土壌区の1/5~1/3であつた.
9. 試料を灰化せず水でアルミニウムの抽出をした結果, 酸性土壌区では灰化酸処理した場合の27~38%であつたが, アルカリ性土壌区では著しく少なくわずかに7~8%であつた. この結果からアルカリ性土壌区では植物体内でアルミニウムがリンと結合して不溶性となる割合が多いことが推定された.

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