抄録
前報に引き続き生長抑制剤の開花前花房処理が着果および新しようの生育などに及ぼす影響について, 茎葉散布, 摘心などの効果と比較して調査した.
巨峰に対するSADH(B-ナイン) 500ppmの花房浸せきあるいは 2,500ppm の花房散布のいずれも有核果の着果を有意に促進し, とくに後者は同濃度の茎葉のみへの散布と対比される効果を示したが, 茎葉処理とは対照的に新しようの生育をまつたく抑制しなかつた.
マスカットに対する CCC 200ppm の花房浸せき茎葉散布処理においても巨峰の場合と同様の結果が得られた. 同様では開花前の摘心処理も比較のため行なつたが, 有意な着果促進効果は認められなかつた. また, 花粉の発芽率はCCCの各処理および摘心によつて影響されなかつた.
前報およびこれらの結果より, 生長抑制剤のブドウの着果促進機構は, 従来提示されている発育中の新しようと花房 (果房) の間の養分競合の減少という考え方のみでは説明出来ないことが明確となつた.