抄録
温州ミカンの貯蔵中の湿度管理法の新しい試みとして, 果実 (石川系温州) を回転棚上で貯蔵し, 低温高湿下 (2.5±1°C, 91±2%) で棚を回転 (1回転/70~80秒) させることによつて, 果実をゆるやか (2~3cm/秒)に動かして, 果皮からの水蒸気を拡散させ, 果皮が吸水して浮皮になるのを防ぎながら, かつ果実の目減りを抑制する方法について検討した.
1. 静置区 (対照区) は, この温湿度下では貯蔵1か月頃から浮皮果が発生し始め, 貯蔵3か月目には赤道部全体に果皮と果肉の間に明確な空げきを生じた. 回転区では貯蔵4か月間 (4月中旬まで) 全く浮皮果の発生がみられなかつた. 120日後の目減りは静置区は7.41%, 回転区は12.2%であつた.
2. 果皮と果肉の含水率 (100-固形物含量率) は貯蔵中に増加していき, 貯蔵後半には両区の固形物含量に差がみられ, 静置区では果皮が吸水して固形物含量率がかなり低下したが, 回転区では果皮の吸水現象はほとんどみられなかつた. このことは両区の果肉率 (果肉重量/果実重量) に影響して, 貯蔵4か月後には静置区の果肉率は5.23%減少して74.50%になつたのに対し, 回転区は2.59%減少して77.14%になり, 両区の果肉率に2.64%の差を生じた.
3. 貯蔵中に両区とも糖, 酸含量が減少したが, 回転区ではこの減少が抑制され, 貯蔵4か月後の全糖含量および酸含量に静置区との間で果皮でそれぞれ18.8%, 24.4%, 果肉で16.7%, 19.0%の差を生じた.
4. 官能検査の結果は, 貯蔵3か月間両区とも良好な外観, 食味を保持した. 貯蔵4か月間の腐敗率は静置区で7.50%, 回転区で2.08%であつた.
以上のように, 送風によつて果実からの水蒸気を拡散するかわりに, 果実自体を動かして, 果表面の水蒸気を拡散させる方法を用いれば, 果面に当たる風速は常に一定で, かなり高湿度下でも長期間, 高品質の温州ミカンが貯蔵できることが示唆された.