抄録
アサガオのわい性品種キダチと高丈性品種テンダン, および両者の正逆F1雑種の若い種子のはいとはい乳, および芽生えの子葉とはい軸に含まれているジベレリンの化学的特性と生物活性を各系統の間で比較調査した.
組織のアルコール抽出物を酢酸エチルを用いて酸性層と水溶性層に分かくした. 両者の層をアンモニア性イソプロパノールの展開剤でペーパークロマトグラフイーを行ない, 各々のRf値の部分に分けて, そこにあるジベレリンの生物活性をイネ, 小丈玉錦, の“浸漬法”によって調べた.
はい, はい乳および芽生えのはい軸の酸性層に含まれているジベレリンは, GA3, GA5およびGA20と思はれる. 芽生えの子葉のジベレリンは上記のジベレリンより極性の高い化合物と思はれる. 各の組織に於けるこれらの遊離型ジベレリンの含量は, 各系統の間で著しい相異がない. 他方, 水溶性層のジベレリンの大部分はGA3の配糖体およびそれに関係ある化合物と思はれる. テンダンの各組織に於けるこの結合型ジベレリンの含量はキダチに比べて著しく多い. 各F1雑種に於けるこの型のジベレリンの活性パターンはそれぞれの母親品種に似ている. これらの結果は, 組織内の結合型ジベレリンの代謝がテンダンとキダチの間で著しく異なる. そして更にこの特性は母性遺伝する可能性を示唆している. 両F1雑種のはい軸は高丈性の親品種テンダンより長い. しかし, このF1雑種のはい軸に於けるジベレリン含量はテンダンより少ない. この事は雑種強性によるはい軸の伸長の促進に内生ジベレリンが直接に関与していないことを示唆している.