園芸学会雑誌
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果樹の葉内水分欠乏に関する研究 (第2報)
冬季における温州ミカン葉の Water potential と気象要因との関係
間苧谷 徹町田 裕
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1976 年 44 巻 4 号 p. 360-366

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抄録

広島果試柑橘試験地の尾張系温州の成木および果試安芸津支場の6年生杉山温州を用い, 土壌水分が多い条件下での冬季の葉の water potential (ψ) と気象要因および気孔の開閉について調査を行なった. 気象要因は, 風速の1/2乗 (U1/2) と葉面水蒸気濃度差 (ΔC) の積(U1/2ΔC) で表わした. このU1/2ΔCは葉面からの水蒸気輸送を決定する近似的気象因子である.
(1) 冬季の日出前の葉のψ(ψmax) は土壌水分が多い場合でも, 低地温による根の吸水不足のために, 常時-10atms前後以下という低い水分状態に置かれていた.
(2) 冬季の葉のψの日変化は, 夏季のように一般的なパターンを示すことは困難であった. これは風速が大きく影響するためと思われた. しかし冬の葉のψの動きを次の二つに分類することが出来た. 第1は, U1/2ΔCと関係をもって葉のψが変化する場合, 第2は, U1/2ΔCと対応しないでψが変化する場合である. 前者は気孔が閉じている時であり, 後者は気孔が開いている時であった.
(3) 冬季において気孔が開く気象条件は, 強風と低気温が重なった時であった. このように強寒風下で気孔が開くことは, きわめて奇妙な現象であるが, これによって葉のψは低下し, 植物体は強度の water stress に落ち入ると思われた. 冬季の季節風による落葉現象を水分生理の面から見るならば, 強寒風-気孔の開孔の結果, 植物体の water stress が増大するものと思われた.

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