園芸学会雑誌
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果樹の葉内水分不足に関する研究 (第3報)
土壌要因がカンキツ葉の Water potential に及ぼす影響について
間苧谷 徹町田 裕山津 憲治山崎 隆生
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1976 年 44 巻 4 号 p. 367-374

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抄録

杉山温州, 宮川早生およびマルチーズブラッドを用い, 夏季における土壌要因が, 葉の水ポテンシャル(ψ)に及ぼす影響について検討した. 結果の概要を下記に示す.
1. 細根の大部分が分布する根圏土壌の毛管ポテンシャルと, 早朝のψ(ψmax) の間には, 可なり密接な関係が認められ, pF3.5~4.0付近から, ψmaxは急激に低下していつた. 日中のψ(ψmin)は, 気象因子および土壌の毛管ポテンシャルだけでなく, 土壌母材によつても異なつた. すなわち, 気象条件および毛管ポテンシャルが概略同一であつても, 花こう岩土壌に比べ, 流紋岩土壌栽植樹のψminは低かつた. これは, 土壌中の水の動きと関連の深い物理性 (不飽和透水係数) によるものと思われる.
2.土層の深さの差異が, ψmaxおよび土壌の毛管ポテンシャルの動きに及ぼす影響を検討したところ, 積算蒸発計蒸発量の増加に従い, 最初の間は大差なかつたが, ψmaxが-4.5barを過ぎた頃から, 土層が深い樹は, 浅い樹に比べ, ψmaxおよび毛管ポテンシャルの低下は, 相当緩慢になつた. 両土層の間には, 根系の深さに関する差はなかつたこと, および土層の浅い樹の根量と地上部の生育は, 土層の深い樹に比べ貧弱であつたことを考え合わせると, 下層土からの補給水の多少が, この結果に反映したと思われる.
3. はち植えの幼木を用い, 種々の比率で根を二つに分け, 一部の根を適湿土壌中 (適湿部位) におき, 残りの根が分布する土壌を自然乾燥処理 (乾燥部位) を行なつた. あるところまでψmaxが低下すると, 乾燥部位の土壌が乾燥し続けていつたにもかかわらず, ψmaxは一定値に保たれた. また, その値は, 適湿土壌中の細根の比率を反映しているようであつた.
4. はち植え幼木を用い, 根の浸水処理を行なつたところ, 初期には, 浸水区のψminは, 明らかに適湿区より低下した. しかし, 処理開始より5~7日目頃からは, 浸水区のψminは逆に異常に高い値を示し, 気孔も相当に閉じていた.

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