園芸学会雑誌
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サボテンにおける接木ゆ合過程の組織観察
下村 孝冨士原 健三
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1976 年 44 巻 4 号 p. 402-408

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抄録

‘シシオウマル’(Notocactus submammulosus var. pampeanus) の実生発芽1週間目の苗を‘サンカクチュウ’(Hylocereus trigonus) のさし木苗につぎ, 一定期間ごとに顕微鏡切片を作製して, ゆ合組織形成の過程を観察した.
つぎ穂と台木の維管束の切断面を合わせてついだ場合のゆ合過程は次のようであった.
つぎ木後2~4日目につぎ木面に, 台木, つぎ穂の両組織に由来するカルスが形成され, 4~6日目にかけてつぎ穂, 台木の細胞がゆ着した. つぎ木後8~10日目には, つぎ穂と台木双方の維管束切断面の間にあるカルスの細胞が分裂, 分化を行ない, 前形成層を形成した. この前形成層はその後, 形成層細胞, 道管要素, 師管などを分化し, 台木とつぎ穂の維管束を結ぶ「連絡維管束」に発達した. この維管束の完成はつぎ木後15~20日目にみられた.
つぎ穂を横にずらせてついだ場合にも同様の過程をへたが, 維管束連絡にいたる個体は少なかっうた. すなわち, 維管束を合わせてついだ場合に維管束連絡を完成した個体は生存個体数の100%を占めたのに対し, つぎ穂を横に1mmずらせた場合は30%, 3mmずらせた場合は10%にすぎなかった.
維管束連絡にいたらなかった個体は, A) 細胞ゆ着の完成のみにとどまり, カルス内での細胞分裂は起らなかった. B) 細胞ゆ着完成の後, つぎ穂の維管束切断面の下に位置するカルスの細胞が分裂し, つぎ穂の維管束と連絡する短かい分裂細胞群に発達したが, 台木の維管束とはつながらなかった. のいずれかの発達段階にとどまった.

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