抄録
ピーマン果実を低温下 (0~6°C) に貯蔵すると短時間で種子のかつ変が生ずる. このかつ変に関与する物質(クロロゲン酸) およびその生合成の key enzyme である phenylalanine ammonia-lyase (PAL), tyrosine ammonia-lyase (TAL) などの変動, また, PAL, TAL とエチレンとの関連についてはすでに報告した.
本研究は種子にかつ変基質の前駆物質であるL-フェニールアラニン-U-14Cを取り込ませ, 貯蔵温度および貯蔵時間の差異による14C移行の追跡実験から低温処理による種子のかつ変の発生機構を考察したものである.
(1) L-フェニールアラニン-U-14Cを種子に取り込ませ, 1°Cおよび2°CCに貯蔵し, 種子のエタノール可溶性フェノール酸を抽出し, 同定したところ, 両区とも6時間後にはすでに, シンナミルーキナ酸, クロロゲン酸, コーヒー酸と一つの未同定物質に取り込まれることがわかつた. なお1°C貯蔵の種子ではいったん取り込まれたシンナミルーキナ酸およびクロロゲン酸が貯蔵6~24時間の間で顕著な減少を示すが, 20°C区ではそのような変化は認められなかった.
(2) 一方L-フェニールアラニン-U-14Cを取り込ませた種子のエタノール不溶性残渣をアルカリニトロベンゼンで酸化し, リグニンアルデヒドへの取り込みを調べたところ, 1°Cおよび2°Cの両区ともよくリグニンアルデヒドに取り込まれることを認めた.
(3) 本研究から, ピーマン種子のフェノール酸の代謝は, (i) フェニールアラニン→シンナミルーキナ酸→クロロゲン酸→かつ変, (ii) フェニールアラニン→リグニンであり, しかも (i) の系が低温下で一時的により進行することを示唆した.