抄録
カーネーションの生育と花色に及ぼす温度の影響を明らかにするため,‘ショッキング•ピンク•シム’を用いて種々の温度条件下で実験を行なつた.
設定された15゜, 20゜および25°Cの温度のもとで, 温度が高くなるにつれて, 葉, 花の大きさや茎の太さは減少し, 葉色もうすくなつたが, 第一花の開花は促進された.
アントシアン生成は15°Cの低温でもつとも良い結果が得られ, 高温になるとともに少なくなり, 花色の退色も著しかつた.
25°C高温下で明期あるいは暗期に15°Cの低温を6時間挿入した場合, 明期の高温中断は連続高温下よりアントシアン生成に対して効果が大きく, 明期における温度の重要なことが示唆された.
葉および花が別々に温度処理されたとき, アントシアンの生成は葉のおかれた温度より花の温度によつて影響されるところが大きかつた.
花のみが, あるいは植物体全体が低温から高温条件のもとへ移されたとき, いずれの場合も, 変温後比較的短い期間にアントシアン含量の低下が見られた.
葉内糖含量は温度の上昇にともなつて減少するが, 花弁内糖含量は温度による影響は少なかつた.
また, 花弁内の糖はそのほとんどが還元糖であり, 葉内のそれと比較して極めて多量に蓄積された.