園芸学会雑誌
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青果物の低温障害に関する研究
(第1報)キュウリ果実の低温障害と生体膜の変性について
辰巳 保夫邨田 卓夫
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1978 年 47 巻 1 号 p. 105-110

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抄録
キュウリ果実の低温障害の発生と生体膜の変化との関係を明らかにする目的で, 組織切片を用いて細胞膜から漏出するイオン量を, 貯蔵温度, 貯蔵期間, 測定温度を変えて調べ, 低温障害の発生機構について考察を加えた.
1. 10°C, 20°C貯蔵区では貯蔵12日間低温障害の発生が認められなかったが, 0°, 5°C貯蔵区では貯蔵5日目頃から呼吸が漸増し始め, 果表面にピッティングが発生した.
2. 組織切片からの脱塩水への全イオンおよびKイオンの漏出は, 10°, 20°C貯蔵のものでは貯蔵期間を通じて同程度であったが, 0°, 5°C貯蔵区では貯蔵7日目頃からイオン漏出速度が増大し, 12日目には10°, 20°C貯蔵区の約2倍の漏出を示した.
3. 貯蔵当初のキュウリ果肉組織切片を脱塩水中に入れ, 0°~25°C下で脱塩水中へのイオンの漏出の速度を調べ, Arrhenius の式に従って図示すると5°~10°Cの間に折れ曲がり点がみられた. この折れ曲がり点は10°C貯蔵区では測定したすべての区にみられた. 5°C貯蔵のものでは貯蔵9日目で折れ曲がり点が不明瞭になり, しかも漏出割合に温度依存性が認められなくなった.
4. 低温耐性の弱いピーマンと耐性の強いジャガイモについて, Kイオン漏出と温度との関係を調べたところ, 耐性の弱いピーマンではキュウリの場合と同様にArrhenius plots に折れ曲がり点がみられ, 耐性の強いジャガイモでは折れ曲がりがみられず直線であった.
以上のような実験結果から, 生体膜の相転換, 機能, 構造などと低温障害の発生機構との関係について考察した.
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