園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
ナス果実の低温障害に関する研究
(第5報)低温障害発生に伴う膜透過性と含有リン脂質の変化ならびに膜透過性に及ぼすフェノール物質の影響
阿部 一博緒方 邦安
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 47 巻 1 号 p. 111-120

詳細
抄録
本実験はナス果実の低温障害発生に伴う膜透過性と含有リン脂質の変化を調べるとともに, 膜透過性, リン脂質含量および細胞構造に及ぼすクロロゲン酸の影響を追求したものである.
(1) ナス果実の貯蔵に伴うK+漏出量は, 20°C区は貯蔵期間を通じてほとんど変化はみられなかったが, 1°C区は低温障害の発生に伴い増加した.
(2) ナス果実のリン脂質の主要なものは, phosphatidylethanolamine(PE) と phosphatidylcholine(PC)であり, これらは貯蔵温度や熟度に関係なく減少した. ただし, 過熟果ではその減少の程度は比較的少なかった.
(3) p-クマール酸やクロロゲン酸をナス果実切片に添加するとK+3漏出が増加した. またDNPも同様にK+漏出量を増加することを認めた. 一方ナス果実切片にアスコルビン酸とクロロゲン酸を同時に添加するとK+漏出の増加はみられなかった.
(4) クロロゲン酸はナス果実切片の含有リン脂質を減少させた.
(5) クロロゲン酸はナス果実の細胞構造, とくにミトコンドリアの膨化やトノプラストの部分的な消滅を促進させることを認めた.
著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top