園芸学会雑誌
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ハッサクの果実の肥大と果汁の糖, 酸含量の変動に及ぼす摘果時期の影響
富田 栄一夏見 兼生
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1978 年 47 巻 2 号 p. 158-166

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抄録
12年生ハッサク樹を用いて, 7月摘果区 (55葉に1果の割合), 8月摘果区 (53葉に1果の割合) および無摘果区 (31葉に1果の割合) を設けて, 果実の肥大および果汁の糖, 酸含量の樹内変動に及ぼす影響をみた.
(1) 7, 8月に摘果を行うと, 果実の肥大がよくなって, L, M級の果実が多くなり, 大きな果実の占める割合が無摘果区にくらべて増加した. ちなみに, L級以上の大果の割合をみると, 7月摘果区で56.7%, 8月摘果区で44.2%, 無摘果区で9.7%であった. 1果平均重は, それぞれ273g, 270g, 209gであり, 7月摘果区と8月摘果区の間の差は小さかった. 結果部位別にみた平均果実重は, 摘果区, 無摘果区とも上部ですぐれ, 下部の内成りで劣った.
(2) 1樹内の果汁の糖含量の分布 (12月調査) は, 7月摘果区で9.0~10.4%, 8月摘果区で8.8~10.0%, 無摘果区で9.2~11.0%の範囲にあり, 酸含量の分布は, それぞれ1.4~1.7%, 1.3~1.8%, 1.4~2.0%の範囲にあった. 糖, 酸含量のバラツキは無摘果区でやや大きかった.
12月に収穫して常温貯蔵し3月に調査したところ, 糖含量の分布は, 7月摘果区で9.0~10.8%, 8月摘果区で9.0~10.6%, 無摘果区で9.0~11.0%の範囲となり, 酸含量の分布は, それぞれ1.1~1.5%, 1.0~1.5%, 1.1~1.7%の範囲となった.
12月調査の平均糖含量は, 7月摘果区で9.6%, 8月摘果区で9.4%, 無摘果区で9.9%であり, 平均酸含量は, それぞれ1.62%, 1.58%, 1.75%であり, 糖, 酸含量とも無摘果区でやや高かった. なお, 結果部位による差はほとんど認められなかった.
(3) 果実重と果汁の糖, 酸含量との相関関係をみると, 果実重と酸含量の間に, 12月および3月調査とも摘果区, 無摘果区の両方で有意な負の相関が認められた. その相関係数は, 7月摘果区でr=-0.54ないし-0.41, 8月摘果区でr=-0.56ないし-0.55, 無摘果区でr=-0.72ないし-0.55であった.
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