抄録
地温と葉の厚さの変動現象との関係を追跡した. 10月上旬においては, 地温の低下と共に, 葉の厚さは薄くなり, 地温が約17°Cに低下すると周期現象が消失した. ところが, 11月中旬に同様の処理をしたところ, 周期現象が消失する温度は約11°Cであった. 一方, 地温をもとの温度にもどしたところ, 10月上旬では地温の上昇に伴って葉の厚さが厚くなり, 間もなく周期現象が回復した. しかし, 11月中下旬になると, 地温の上昇に伴って, 葉は厚くなったが, 再び周期現象が認められるまでには長い時間を要した. 10月中旬には地温を36°C近くまで上げても周期現象にそれほど顕著な変化が認められなかったが, 11月下旬では, 35°C近くで, 周期現象の乱れを生ずるに至った. このとき地温を再び30°C以下に低下させると周期現象が回復した. 以上の結果から, 10月中旬までと, 11月中旬以降とでは, 根の地温に対する適応性が異なり, 前者ではその適温域が比較的高いところにあるのに対して, 後者では適温域がさらに低温側に移っているものと推察される.
次に, 葉温および葉の厚さの周期変動について調和解析をしたところ, 葉の厚さは葉温の変化に対して約553秒から641秒の遅れで同調していることが明らかとなった.