抄録
ブドウ樹の地上部の発育と内生ホルモンの関係を調べるために, 樹液中の内生ホルモンのレベルを異なった発育時期において調べた.
(1) 新梢の発育は典型的な double sigmoid 曲線を示し. SG-IIの始まりは満開の時期であった. また, 根の発育は新梢の発育が停止したのちに著しかった.
(2) 樹液中のサイトカイニン活性はブタノール層(遊離型) と水層 (結合型) の両分画に認められ, それぞれの分画は少くとも二つの主要な部分に分けられた.
(3) 遊離型のサイトカイニンは4月から6月にかけて増加し, その後急激に減少した. しかし, 結合型のサイトカイニンは5月から開花期の6月にかけて高い活性を維持していた. また, 樹液中のジベレリン活性は5月から認められ, 開花および果実の形成時期である6月にかけて増加するが, その後急激に減少した. つぎに, オーキシンおよびアブシジン酸様の活性はどの発育時期においても低レベルであった.
これらの結果より, ブドウ樹の根で主として合成されたジベレリンおよびサイトカイニンは新梢および花穂の発育に対して生理的に特に重要な役割を果たしているものと考えられた.