園芸学会雑誌
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異った温度条件下におけるさし穂の発根と呼吸
大石 惇町田 英夫細井 寅三小松 春喜
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1978 年 47 巻 2 号 p. 243-247

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抄録

1. ツバキ (品種: 乙女) およびキク (品種: アルプス)を供試し, 異なった温度条件下 (17°C, 23°C, 30°C)における発根とそれに伴う呼吸変化を比較調査した.
2. ツバキについては, 高温ほどカルス形成ならびに発根が促進され, さし木70日後における発根率は, 17°C区16.0%, 23°C区36.0%, 30°C区87.5%を示した.
3. キクについては, 発根の開始は23°C区および30°C区で早かったが, さし木19日後における発根率ならびにさし穂当りの発根数は, ともに17°C区で最も優れ, 次いで23°C区, 30°C区の順であった.
4. ツバキおよびキクのさし穂を発根期間中の各時期に掘り取り, 上部と下部の2つに分けてそれぞれの呼吸変化を測定した. さし穂上部の呼吸量 (単位時間•単位重量当りCO2排出量) は, さし木期間中常にキクの方が著しく大きかった. 両種ともに, さし木した時点では高温ほど呼吸が促進され, その後急激に減少したがその減少の程度は高温ほど著しかった. その後は各温度区とも呼吸量はほとんど変らないか, あるいはわずかに減少する程度であった.
5. さし穂下部の呼吸変化については, 両種ともにさし木直後における呼吸量の減少はみられず, その後発根に伴う著しい呼吸促進のピークが出現した. すなわち, キクではさし木後7~11日に, ツバキでは50~60日に一時的に呼吸の急激な促進がみられ, 高温ほどその程度が大きく, かつ出現の時期が早かった.
6. 異なった温度条件下における発根の良否と呼吸量の大小との関係では, ツバキでは呼吸量の大なる高温ほど発根が優れたが, キクでは逆に呼吸量の小さい低温ほど発根が優れる傾向があった.

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