園芸学会雑誌
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生長抑制剤によるブドウの花ぶるい防止に関する研究(第4報)
開花前のSADH花穂浸せき, 新しょう摘心及び花穂切り込みが巨峰の着果に及ぼす影響
内藤 隆次河嶋 孝彦
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1980 年 49 巻 3 号 p. 297-310

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抄録
SADH (B-ナイン) 2,500ppmの満開前26~20日における花穂浸せき処理は, 1975~1977年のいずれにおいても巨峰の有核果の着果を有意に促進し, また有核果中の種子数も増加した. 満開前約10日の8葉摘心は, 1975, 1976年ともに有核果の着果に影響を与えなかったが, 無核果の着果を有意に増加した. 1977年の同処理は, 有核果の着果を促進したが, その効果はSADHの花穂処理に比べ劣った. 満開前約10日の花穂切り込み処理は, 1975, 1976年に行ったが, 両年とも無核果の着果のみ促進する傾向があった.
SADHの花穂処理は, 開花前及び開花中の小花特に子房壁の量的発育を有意に抑制した. これに対し摘心は逆に促進する傾向があり, 花穂切り込みの影響は明らかでなかった. 一方, これらのいずれの処理も, 寒天培地上の花粉発芽率, 花柱及び子房内における花粉管の伸長などに影響を及ぼさなかった.
1975, 1977年に, 開花前及び開花中の小花のジベレリン活性を調べたが, いずれの処理も一定の影響を示さなかった. しかし, サイトカイニン活性は, 両年ともにSADH処理により高まった. また1977年のみ摘心も同様の効果を示した. 同時期の小花中のタンパク態N及び全N含量は, SADH花穂処理により増加したが, これらの成分に対する摘心の影響は明らかでなかった. 更に同時期の全糖含量は, SADH花穂処理及び摘心のいずれによっても増加する傾向があったが, SADH花穂処理の場合, 開花直前に一時的に減少が認められた.
これらの結果より, SADHの花穂浸せき処理は, 有核果の着果をはい珠の受精機能を向上することにより促進し, またSADHのこの効果は開花前の小花中の内生サイトカイニン活性の増加と関係があるように推論される. 更に摘心と花穂切り込みが, SADH処理と逆に主に無核果の着果のみ促進したのは, これらの処理が開花期の小花への養分供給を増加し, 栄養的に単為結実性を高めたためと思われる.
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