園芸学会雑誌
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ビワ果実の発育と糖の蓄積
平井 正志
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1980 年 49 巻 3 号 p. 347-353

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抄録
ビワ果実の発育は2つの期間に分けられた. その前期は生長期であり, 種子重が急速に増加した. 後期は成熟期であり, 種子重の増加は止まり, 種皮が着色した.またこの期に果肉においてリンゴ酸の減少, カロチノイドの増加および果肉の軟化が見られた. これらの他の果実にも見られる一般的な成熟現象に加え, ビワの成熟期には果実新鮮重の増加と糖の急速な蓄積もみられた. ビワのこの成熟特性はイチジクのそれに類似している.
ビワ果実は成熟期の初めにエチレンを発生した. エチレンが成熟の引き金になっている可能性が考えられる.
ビワ幼果で最も多い可溶性の糖はソルビトールであった. その含量は生長期の初期と成熟期に増加したが, 全糖に対する割合は減少した. 成熟果のソルビトールは全糖のわずか1~2%であった.
果肉のデンプン含量は生長期に減少し, 成熟期に増加した.
糖の蓄積速度は成熟期の初めに増加した .特にショ糖の蓄積速度の増加は著しく, ショ糖は成熟果で最も多く存在する糖であった. 成熟果に存在する糖の約90%はこの成熟期の2週間に蓄積した. この糖は主として果実以外の組織から転流するものと考えられ, この期間における樹体の糖代謝は果実の品質に大きな影響を持つものと推定される.
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