園芸学会雑誌
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シュンラン及びパフィオペディラムの種子形成, ならびに種子発芽について
長島 時子
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1982 年 51 巻 1 号 p. 94-105

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抄録

シュンランおよびパフィオペディラムの2種類のランを供試し, 胚珠形成および受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.
1. シュンランのずい柱は受粉すると緑色を呈して肥大し, ずい柱の側壁は内側に攣曲した. このずい柱は受粉後100日ごろに枯死した.
2. 子房の大きさは, シュンランでは受粉すると急速に増加し, 受粉後100日ごろに一定値に達した. パフィオペディラムの子房の長さは開花中から成熟に至るまでほとんどど同様であった. 一方, 子房の幅の増加も他のランに比較して緩慢であった.
3. 種子および胚の大きさは, シュンランは受精すると急速に増大し, 種子は受粉後110日ごろに, 胚は受粉後115~120日ごろにそれぞれ一定値に達した. パフィオペディラムでは, 受精後一定期間増大し, その後しばらく増大を休止し, 再び増大して, それぞれ一定値に達した.
4. 胚珠形成は, シュンランでは受粉後43~45日ごろに, パフィオペディラムでは受粉後58~60日ごろに完了した. 重複受精は, シュンランでは受粉後48~50日ごろに, パフィオペディラムでは受粉後68~70日ごろに行われた. 胚のう核は, シュンランおよびパフィオペディラムのいずれにおいても, 8個観察された. 受粉後から胚発生完了までに要する日数は, シュンランでは115~120日, パフィオペディラムでは195~200日であった.
5. 胚発生過程の様相は, 以下のようであった. すなわち, 4細胞期では, シュンランはC1型, パフィオペディラムはC2型であった. 4細胞期以降の胚発生過程をみると, シュンランはH型 (Angraecum distichum型), パフィオペディラムはF型 (Coelogyne parishii型) の変異型に, それぞれ類似していた. シュンランおよびパフィオペディラムの胚はいずれもca細胞から形成された.
6. 受精後の胚乳核は, シュンランおよびパフィオペディラムのいずれにおいても3~5個が観察された. 胚柄はシュンランおよびパフィオペディラムのいずれにおいても認められた. また, 胚管はシュンランで観察された.
7. 種子の発芽能力は, シュンランでは16細胞期からインターメディアリー期の間(受粉後80日ごろ)以降, パフィオペディラムでは16細胞期(受粉後160日ごろ)以降に認められた. なお, いずれのランにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. 培地としては, MS 培地に比較してH培地が優れていた.

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