園芸学会雑誌
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ベニタデのアントシアニン含量に及ぼす栽培時期の影響
三浦 周行岩田 正利
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1982 年 51 巻 2 号 p. 165-171

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抄録

4月から10月まで毎月ベニタデを栽培し, 各月における子葉展開後のアントシアニン含量の推移を調ベ, アントシアニン生成に及ぼす栽培時期の影響を検討した.
1. いずれの栽培時期においても, 個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含量は一般に子葉展開後急速に増加し, その後は緩やかに増加, あるいはほぼ一定の値を推持した. しかし, その変化の程度は栽培時期により異なり, 4月, 特に5月栽培でばアントシアニン含量は常にかなり高く, 次いで6月栽培で高く推移した. 一方, 7~9月栽培においてはアントシアニン含量は低く推移した. 10月栽培では初期には最も低かったが, 徐々に高まり, 6月栽培の値に近づく傾向を示した.
2. 実際栽培での収穫時期に相当する本葉出現日の個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含量は, 4月および5月栽培で最も高く, 次いで6月および10月栽培であった. 一方, 7~9月栽培は最も低く, 4~5月栽培の60%以下であった.
3. 少数の例外はあったが, 子葉展開日から8日後までのいずれの生育日数においても, 個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含最は, それまでの1日当たり日射量の影響を除くと, 日平均気温と負の高い相関を示し, 日平均気温の影響を除くと, 1日当たり日射量と正の高い相関を示した.
4. 本葉出現日の個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含量も, 本葉出現日までの1日当たり日射量および同所要日数の影響を除くと, 日平均気温と負の高い相関関係にあり, 日平均気湿および所要日数の影響を除くと, 1日当たり日射量と正の高い相関関係にあった.
5. 部位別のアントシアニン含量の推移を調べたところ, 本葉出現日までの子葉中の含量は常に下胚軸中の含量より高かった.
以上の結果から, ベニタデのアントシアニン生成は低温, あるいは多日射の時期ほど促進されることが推定された.

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