抄録
‘宮川早生’及び‘杉山温州’の着色期における果皮成分の変化と浮皮との関係を調べた. 果皮の新鮮重は果肉重の増加が停止した後も増加を続け, この時期に果実が浮皮になった. この果皮新鮮重の増加は可溶性の糖の増加を伴い, 果皮乾物重の増加のほとんどが糖の増加によるものであった. 一方, 果皮のアルコール不溶物の量はほとんど変化しなかった. 着色期に果皮のタンパク質含量と酸性ホスファターゼ活性は共に徐々に増加した.
エセフォンは浮皮をある程度助長し, 果皮新鮮重, 乾物重をやや増加させた.
‘杉山温州’と浮皮になりにくい‘今村温州’の着色期における果皮成分の変化を比較すると,‘今村温州’では果皮重の増加がほとんど見られず, 糖含量の増加もわずかであった. また浮皮の発生はほとんど見られなかった.
以上の結果から, 糖蓄積と浮皮との密接な関係が明らかになり, これらに対するエチレンの関与が示唆された.