園芸学会雑誌
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キュウリ果実の低温障害とミトコンドリアの機能の変化との関係
山脇 和樹富山 光子茶珍 和雄岩田 隆
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1983 年 52 巻 3 号 p. 332-338

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抄録
キュウリ果実の低温障害とミトコンドリアの機能との関係を明らかにするため, 貯蔵温度及び湿度条件が, 低温障害の発生並びにミトコンドリアの呼吸機能に及ぼす影響について調べた.
湿度条件の検討は, 乾燥しやすい有孔包装区および乾燥しにくい無孔包装区 (非密封) を設けることによって行い, 1, 6, 15°Cに貯蔵した. 1°C貯蔵の有孔包装区では貯蔵2日後にピッティングが発生したが, 1°C無孔区では4週後にみられた. 6, 15°C貯蔵では発生しなかった.
CO2排出量の変化において, 1°C及び6°C貯蔵では,無孔区が有孔区を上回る値を示した. 1°C貯蔵から15°Cに移すと急増したが, その傾向には包装法による差はなかった.
貯蔵に伴うミトコンドリアの基質酸化能並びに酸化的リン酸化能の変化を調べた. コハク酸酸化速度は, 6°C及び15°C貯蔵では漸増あるいは変化がないのに対して, 1°C貯蔵では減少した. 各貯蔵温度区で無孔区が有孔区を上回った. 呼吸調節率 (RCR) は, 貯蔵開始時約1.6であったが, 1°C貯蔵では急減し, 4日以後1.0となって呼吸調節能を示さなくなった. 6,15°C貯蔵では約1.3に減少後あまり変化はなかった. これらについては各温度とも有孔, 無孔区の差はほとんどなかった.ADP/O比もRCRと同様, 有孔, 無孔区の差は明確ではなく, 6°C及び15°Cで若干増加したのに対し, 1°Cでは急減した. 1°Cでの呼吸調節能の低下は, 貯蔵1週まで可逆的であり, 15°Cへの昇温により回復した.
以上のことから, 1°Cの有孔包装区において早期にピッティングの発生がみられたが, ミトコンドリアの機能の低下は包装方法と直接かかわりなく, 1°Cの低温によって急速に誘起されるものと推測された.
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