園芸学会雑誌
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ウンシュウミカン果実の成熟に伴う糖, 有機酸の変化
大東 宏佐藤 義彦
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1985 年 54 巻 2 号 p. 155-162

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抄録
早生ウンシュウ‘興津早生’並びに普通ウンシュウ‘シルバーヒル’の果実について, 9月から翌年3月までの間, 糖類並びに有機酸組成を調査した.
両品種果実の主要糖類として果糖, ブドウ糖及びショ糖を分析した. 早生ウンシュウの果汁中ショ糖含量は,糖組成の中で最も優位を占め, 成熟に伴って著しく増加した. 果糖, ブドウ糖含量には, 全調査期間中一定の増減傾向はみられなかった. 普通ウンシュウの果汁中ショ糖含量は糖組成の中で最も多く, 翌年2月中旬まで漸増した. 果糖, ブドウ糖の消長は早生ウンシュウと同様の傾向であり, 調査期間中増減に一定傾向を示さなかった.
早生ウンシュウの果皮中糖組成のうち, 果糖, ブドウ糖が多く, ショ糖は常に低かった. 普通ウンシュウの果皮中果糖, ブドウ糖は常に高い値を示し, ショ糖含量は少なかった.
有機酸組成としてグルクロン酸, 乳酸, 酢酸, ピルビン酸, リンゴ酸, クエン酸, コハク酸, イソクエン酸及びα-ケトグルタル酸が検出された. 早生ウンシュウでは10月下旬までの間にクエン酸, リンゴ酸は半減し, 両酸が有機酸減少に占める割合は圧倒的に大きかった. 11月中旬以降, クエン酸, リンゴ酸含量はほぼ一定であった. イソクエン酸, コハク酸並びにピルビン酸含量は10月下旬~11月中旬までに著しく減少した. 乳酸, 酢酸は検出されたものの個々の量を検討することは困難であった. グルクロン酸は10月中旬までの間に激減し, その後12月中旬までほとんど一定量で推移し, 以後こん跡程度となった.
普通ウンシュウのクエン酸含量は10月下旬までに半減し, その後12月下旬まで徐々に減少して, 翌年になるとやや増加の傾向にあった. リンゴ酸も翌年3月までの間に約半減した. これら両酸の量的消長が全有機酸含量の多少を強く左右した. イソクエン酸は翌年1月上旬までかなり多く含有されたが, その後激減してほぼ一定量で推移した. ピルビン酸含量は12月上旬まで緩やかに減少し, 12月下旬には急増して最高値を示し, その後激減して翌年2~3月まで増加した. グルクロン酸含量は12月下旬まで減少し, その後はやや多くなったもののほぼ一定量であった. 乳酸, 酢酸, コハク酸は量的に著しく微量であった. α-ケトグルタル酸は10月中旬まで多量に検出されたが, その前後はこん跡程度であった.
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