抄録
1株の葉数又は葉面積, 着果数及び受光量を調節して, 果実の発育と曲がり果発生との関係を調べた.
1. 1株に1果着果させた場合, 果実の発育は葉数5枚で順調に行われ, それ以下の葉数では葉数が少ないほど抑制された. 収穫果の曲がり角度は葉数5枚で最も小さく, 葉数が少ないほど大きくなった. 葉数1枚では曲がり果のほかに変形果が発生したり, 果実の発育が停止するものがあった.
2. 1株に2~3果着果させた場合, 1果当たり葉数が3枚あると個々の果実は順調に発育し, 収穫果の曲がり角度は小さかった. しかし, 1果当たり葉数が1枚であると, 発育の優勢な果実は最初に伸長して曲がり角度の小さい果実となるが, 劣勢な果実は伸長が遅れて曲がり角度の大きな果実あるいは変形果となった.3. 1株に1果着果させて葉面積を変えた場合, 果実の発育は葉面積1,200cm2で順調に行われ, 曲がり角度は最も小さかったが, それ以下の葉面積では, 葉面積の小さいほど発育が抑制され, 曲がり角度が大きくなった. 摘葉時期の影響は葉面積1,200cm2ではみられなかったが, それ以下では摘葉時期が早いほど果実の発育が抑制され, 曲がり角度も大きくなった.
4. 1株1果着果, 葉数3枚又は5枚の株を寒冷しゃで被覆した場合, 被覆枚数が多いほど果実の発育が抑制され, 曲がり角度が大きくなった. 寒冷しゃ被覆の影響は葉数が少ないほど強く現れた.
5. 以上の結果から, 葉数•葉面積の減少や受光量の減少は, 葉の光合成量, さらには果実への光合成産物の供給量を減少させて, 曲がり果の多発や曲がり角度の増加をもたらすものと考えられる.