抄録
サトイモは自然条件では着花•結実しにくいことが知られている. 事実, 国内各地から収集した品種 (系統)の中で, 着花するものはエグ芋•土垂群の中の数系統に限られ, しかも毎年同じ系統であった. このような日本のサトイモ栽培品種に対して200ppm及び1,000ppmのジベレリン (GA) を生長点付近に微量注入したところ, 大部分の品種で花成を誘導することができた. ′石川早生丸′, ′愛知早生′, ′三州′, ′大吉′のような三倍体品種, ′えび芋′, ′竹の子芋′のような二倍体品種で花成が認められた. 用いたすべての品種 (系統) でGA処理による生殖生長への転換が認められたが, 着花しにくい品種では止葉形成あるいは肉穂花を欠如する花序にとどまるものもあった. また, 着花が多かった′竹の子芋′では異常花序も形成された. これらの結果から, 着花の難易, GAに対する反応程度は共に遺伝的な性質であると考えられた. また花成の程度が品種より種々の段階を示すことから, サトイモにおける花成の誘導過程は"all-or-none"型でなく, むしろ連続的な過程にあると結論された.
GAにより誘導された花序の形態は過去の報告と類似していた. 附属体長あるいは附属体長/雄器官長比による品種の分類について考察した.