園芸学会雑誌
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55 巻, 1 号
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  • 細井 寅三, 大石 惇, 岩佐 映子
    1986 年 55 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ウンシュウミカンの芽の活性の季節的変化を明らかにし, 併せてそれに及ぼす二, 三の処理の影響を調査することによって, カンキツの芽の休眠の機構を解明するとともに, 芽の活性の増大の可能性を探索した.
    2. 鉢植えの早生ウンシュウ′興津早生′を供試し,GA及びカイネチン処理が新梢の伸長並びに伸長停止期に及ぼす影響を調査した. 両者の組み合わせ処理及びGA処理によって伸長が促進され, 伸長停止期が遅延されたが, それらの伸長停止期は対照のものに比べて約3か月遅かった. カイネチン処理による影響はわずかであった. 対照区及びGA区のそれぞれ一部の個体を, 10月21日以降25±2°Cのコイトトロン内に置いたところ,ともに新梢の伸長が促進され, 伸長停止期が遅延されたが, GA処理による伸長の促進及び伸長停止期の遅延は極めて顕著であった.
    3. ウンシュウミカンの芽の活性の季節的変化を知るために, 圃場栽植の′持丸早生′の春枝を7月から翌年3月にわたって採取し, 切枝催芽法と芽培養法によって萠芽率の変化を調査した. それらの値からみた芽の活性の変化は, 夏期に最大を示し, その後急激に低下して秋または晩秋の時期に最低となり, 以後春に向けて時期の推移とともに再び増大する傾向を示した.
    4. 芽の活性の変化に対するりん片の役割を明らかにするために, ′興津早生′の芽を5月下旬から11月下旬にかけて採取し, りん片を除去した芽とりん片をつけたままの芽をともに培養し, 萠芽率の変化を比較調査した.その結果, 実験期間のほとんどを通じてりん片除去芽の萠芽率が高く, とくに芽の活性の高い夏期における促進が顕著であった.
    5. 芽の活性の季節的変化に対する内生ホルモン物質の役割を知るために, ′興津早生′のりん片除去芽を用いてMS基本培地にGA及びBAをそれぞれ単独に添加する区, 及びそれらとABAを組み合わせて添加する区を設け, 各培地上における新芽の伸長状況を比較調査した. 実験期間を通じてGAの添加により伸長が促進されたが, その効果は, 芽の活性の低下した秋期にはABAによって完全に打ち消された. BAの添加による効果はほとんど認められなかった.
    以上の結果から, ウンシュウミカンの芽の活性の季節的変化が明らかとなり, その活性の変化には, GA,ABA及びりん片が密接に関係すること, 及び芽培養法における活性の増大には, GA処理とりん片除去が有効であることが認められた.
  • 松井 弘之, 湯田 英二, 中川 昌一
    1986 年 55 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ′デラウェア′果粒の急激な糖蓄積期に当たる生長第3期の光合成産物の転流形態を明らかにするため, 種々な14C標識化合物 (sucrose, glucose, fructose,malic acid, tartaric acid, leucine, alanine) を用いて調査した.
    1. 葉肉に14C標識化合物を施用した場合, 1時間後, 14C-化合物は葉柄にも認められ, 施用した形態のままで葉柄に転流してきた比率は14C-sucrose で25%,14C-glucose で29%, 14C-fructose で16%, 14C-malicacid で42%, 14C-tartaric acid で80%, 14C-leucineで47%, 14C-alanine で28%であった.
    2. 果房から約75cmのところにある葉柄から 14C標識化合物を吸収させた場合, 2時間後, 吸収させた形態のままで果粒に転流した比率は14C-sucrose で8%(glucose と fructose を加えると70%), 14C-glucose で77%, 14C-fructose で71%, 14C-malic acid で14%,14C-tartaric acid で38%, 14C-leucine で28%, 14C-alanine で17%であった.
    3. 本実験に用いた14C標識化合物の種類によって,単位時間当たりの転流量に差異があり, また, 転流の途中で糖, 有機酸, アミノ酸の相互で転換が認められるものの, 葉から果実への光合成産物の転流形態は糖, 有機酸, アミノ酸のいずれの形態でも可能と考えられる.
  • 白石 真一, 角 利昭, 能塚 一徳
    1986 年 55 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    生食用ブドウとして主要な3品種について, 果粒の成熟期における品質成分として重要な糖, 酸, それに遊離アミノ酸の量的変化を調べた. ′デラウェア′, ′キャンベル•アーリー′, ′笛吹′の3品種とも遊離アミノ酸はアラニンとアルギニンが多量成分であった. 果粒の成熟期には, アラニンで593~1,063μM/100g, アルギニンで265~602μM/100g の範囲にあって, 全遊離アミノ酸含量の38.6%と18.8%の平均値を示した. その他の遊離アミノ酸は量的に少なく, 1~50μM/100g の範囲にあった.
    成熟期間の全酸含量は減少し, ′デラウェア′, ′キャンベル•アーリー′, ′笛吹′の各品種は1.49, 1.01, 1.30%であった. 全糖含量は成熟時に増加した. 各ブドウ品種のべレゾーン期を糖, 酸, アミノ酸の消長から推定した. 即ち遊離アミノ酸含量はべレゾーンの前後に増加が認められた. また′笛吹′ではアルギニンとプロリンの含量が他の品種より多い傾向にあった.
  • 河合 義隆, 手塚 修文, 山本 幸男
    1986 年 55 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘巨峰’の菌根について, 形態的特徴や菌の侵入及びその季節的変動を調べた. また, 罹病根との比較も行った.
    菌根は新しく形成された根に観察され, 典型的なVA菌根であった. 嚢状体は径20~70μmで卵形及び球形のものが多かったが, なかには不規則な形のものも観察された. 分岐体は袋状の膜に包まれていた. 嚢状体は10月から12月の根に, 分岐体は7月から8月の根において多く形成された. VA菌根菌は自家蛍光を持っており,蛍光色素を用いないで蛍光顕微鏡で侵入が観察できた.菌の侵入量は10月以降に増加する傾向がみられた. まれに Rhizoctonia 様内生菌も観察された.
    罹病根における病原菌の侵入に比しVA菌根菌の根への侵入は根の内部にまで多くの菌糸が侵入していたが, 細胞死や枯死などは起きておらず明らかに罹病根とは様相が異なっていた.
  • 尾崎 武, 一井 隆夫
    1986 年 55 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    短梢せん定の17年生‘キャンベル•アーリー’を用いてエチクロゼートの50及び75ppmによる葉面及び全面散布と花穂浸漬を行い, その摘粒効果を無核小果粒の発生, 果房内の着粒構成並びに脱粒経過との関連において検討した.
    1. エチクロゼートは葉面及び全面処理によって無核小果粒の着生を増加させることなく正常果粒数を減少させ, 摘粒効果を示した. 花穂処理では正常果粒数が減少したが, 無核小果粒の着生が著しく増加した.
    2. エチクロゼートの葉面及び全面処理では果粒の肥大と酸度を減少させる傾向を示した. 糖度には影響を与えなかった.
    3. エチクロゼートの処理による正常果粒数の減少は第1~第3の各小穂では小さく, 第4小穂より先の果房先端部において明らかに大きかった.
    4. エチクロゼートの葉面及び全面処理は処理後5~15日の脱粒を助長した. また, 葉面処理は無処理と同じ処理後7~8日に脱粒の山がみられたが, 全面処理はこれより約2日遅く, 花穂処理は更に約3.5日遅れた.
    5. エチクロゼートの葉面及び全面処理は処理後数時間から7日間くらい, 結果枝先端部や葉が下垂症状を呈し, その伸長を抑制したが, 以後回復した. エチクロゼートの摘粒効果は結果枝の伸長抑制からの回復に伴って起こるもと考えられる.
  • 伴野 潔, 林 真二, 田辺 賢二
    1986 年 55 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ニホンナシの人工受粉用品種′長十郎′に種々の生長調節物質を散布し, 花芽形成及び花粉収量に及ぼす影響について検討した.
    1. 6月1日から7月15日まで15日おきにCCC (200ppm), SADH (3,000ppm), エセホン (300ppm), BA(300ppm) 及びGA3 (200ppm) を散布し, ′長十郎′ナシの花芽形成並びに花粉収量に及ぼす効果について調査した. その結果, 6月30日以降にエセホン及びBAを散布すると著しく花芽形成を促進し, 花粉収量も増加することが認められた.
    2. エセホン及びBAの処理時期並びに処理濃度の影響について検討した結果, エセホンは50~100ppm,BAは100~200ppmの濃度で, ともに7月20日から8月20日にかけて散布すると著しく花芽形成を促進し, 花粉収量も増加した. また, 50ppmの濃度のエセホンを7月20日から8月20日にかけて2回散布する方法が花芽形成を最も促進し, 花粉収量も約2.5倍に増加した.
    以上の結果から, ′長十郎′ナシの花芽形成を促進し,花粉収量を増加させる方法として, 新梢生長が停止した後7月20日から8月20日にかけて腋芽の休眠が比較的浅く, しかも頂芽が二次生長しない時期に50ppmの濃度のエセホンを2回散布する方法が最も良好で, 安定して高い効果が得られることから, 極めて実用性が高いものと考えられる.
  • 牧野 時夫, 福井 博一, 今河 茂, 田村 勉
    1986 年 55 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    リンゴ‘旭’に夜間加温処理を行い早期落果を促進させ, その落果と新梢の生長との関係を検討した.
    気温の上昇に伴い新梢の生長は促され, 同時に早期落果が観察されたことから, 果実と新梢との競合が, この早期落果に密接に関与していることが明らかとなった.SADHを新梢に処理することにより, 新梢の生長が抑えられ, 落果率は低くなった. また, 摘心処理で新梢の生長を物理的に抑えた場合も, 同様に落果が抑制された. したがって, これら両処理は果実と新梢との養分競合を弱め, 着果を促す効果を持つと考えられる. BAを処理したところ, 新梢の生長は極めて盛んになり, 落果率も高い値を示したことから, BAは新梢の生長を促進し, 果実と新梢との養分競合を強め, 落果を促す作用があると考えられる. GA4/7処理によって, 落果は抑制されたが, 新梢の生長は500ppm区で促進され, 50及び100ppm区で抑制された. このことから, GA4/7は主に果実に作用して, 着果を促進する効果があると考えられるが, 高濃度においては, 新梢の生長をも促進すると考えられる.
  • 志村 勲, 小林 幹夫, 石川 駿二
    1986 年 55 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハイブッシュの‘Weymouth’ の‘Jersey’, ラビットアイの‘Woodard’と‘Tifeblue’ を供試して, 幼果期から成熟期に至る果実の発育•肥大とそれに伴う果皮色の変化, 呼吸量及びエチレン排出量の変化並びに全糖と全酸含量の経時的変化を調査した. その結果は次のとおりである.
    1. ブルーベリー果実の肥大曲線はダブルシグモイドを示し, その周期は第I期 (迅速生長期), 第II期 (一時的生長停滞期) 及び第III期 (成熟前第2迅速肥大期) に分けられた.
    2. 栽培品種の早晩性は肥大第II期の日数の長短と関連が強く, その期間は早生品種で短かく, 晩生品種で長かった. また, 第III期の日数の長短も早晩性に関与していることが認められた.
    3. 果皮色は果実が肥大第II期から第III期に移行する時期から著しく変化し, とくに早生品種ではその変化が運やかに進行した.
    4. 果実の呼吸量は肥大周期の第II期の終りころもしくは第III期の初めに一時的増加が認められ, ブルーベリーはClimacteric type の果実と考えられた. また, エチレン排出量のピークは呼吸の Climacteric ピークと同時期あるいはやや早い時期に認められた
    5. 全糖含量は Climacteaic rise 後に急増し, 全酸含量は減少した.
  • 早田 保義, 篠原 温, 鈴木 芳夫
    1986 年 55 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    高温がハツカダイコンの生育と体内成分 (サイトカイニン, オーキシン, 糖) に及ぼす影響について調査した.さらに, カイネチンまたはNAA処理が, 高温による肥大抑制を打破する可能性について検討した.
    1) 葉部の還元糖含量は高温区 (30°C/25°C, 昼/夜)と適温区 (22°C/18°C) で顕著な差はなく, 胚軸部に比べ低含量であった. 胚軸部の還元糖含量は適温区で肥大に伴い急増したが, 高温区では緩やかな増加であった.
    2) 胚軸部のオーキシン含量は, 適温区で肥大に伴い増加したが, 高温区では調査期間を通じ低含量であった.
    3) 胚軸部のサイトカイニン含量は, 適温区で肥大開始期 (播種後15~16日) より高い含量が認められたが,高温区では調査期間中大きな変化は無く, 適温区に比べて極めて低い水準となった.
    4) 高温条件下 (30°C) で, 実生 (播種後7日目) の胚軸部にカイネチンを injection 法で7日間直接処理すると, 胚軸部の肥大が認められ, 同時に胚軸部の伸長が抑制された.
    5) これらの結果から, 高温による肥大抑制の原因として, サイトカイニン及びオーキシン活性の低下が, 肥大生長に必要な一次代謝物の転流を抑制するとともに,サイトカイニン活性の低下が直接肥大生長を抑制したものと推察した.
  • Chairerg SAGWANSUPYAKORN, 篠原 温, 鈴木 芳夫
    1986 年 55 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ダイコン種子の変温処理中における, 光強度の花成に対する影響を明らかにするために本研究を行った. 催芽種子を5/5°C, 20/5°Cと30/5°Cの昼夜変温の状態下におき, 5, 10と30klux光度 (日長12時間) を組み合わせて処理を行った. 21日間処理後, 温室内の水耕装置に定植し生育させた.
    5/5°C処理区群は低温が十分であったため, 抽だい•開花は早く, かつ斉一で, 光強度の影響は見られなかった. 20/5°C変温処理区群は, 5/5°C区群より抽だい•開花が有意に遅れた. 特に, 30klux光強度区では5及び10klux区より脱春化効果が顕著となり, 抽だい•開花は最も遅れた. また, この区群では, 高光強度条件下では葉数が有意に多かった. 30/5°C変温処理区群では実験打切りの時点では花芽分化に達しておらず, ドーム状期に達したものも, そのうち20%以下と低かった.
    以上の事から, ダイコンの脱春化過程では, 昼夜並びに光度が低くなると, その効果は減少すると考えられた.
  • 田附 明夫, 崎山 亮三
    1986 年 55 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ガラス室で栽培したキュウリの幼果を植物体に付けたまま果実チェンバーに入れ, 果実周囲の温度を5~30°Cの一定温度とする処理を行い, 果実温度が果実の体積生長に及ぼす影響を調べた.
    2. 果実体積の相対生長率 (RGR) は約5°Cで0となり, 高温ほど高い値となった. RGRの果実温度と果実体積に対する重回帰を各栽培時期について品種別に計算すると, いずれも重相関係数が高かった. RGRは果実温度及び果実体積とそれぞれ正, 負の偏相関を有した. その重回帰式は体積が等しい果実では. RGRが果実温度に対してほぼ直線的に関係することを示した. しかし, RGRのアレニウス•プロットは12°C付近に屈曲点を持つ直線で表され, 果実生長がこの温度を境に質的に異なる可能性が示唆された.
    3. RGRのQ10は15~30°Cの範囲では季節にかかわらず約2であったが, 春のRGRは冬の値より, その範囲のいずれの温度においても高かった. これらの結果を説明するため, RGRの季節間差は果実に流入する師部液の糖濃度の季節間差によってもたらされ, また, 果実温度は果実に対する師部液の流入速度を決定するという仮説を示した.
    4. 供試した2品種間でRGRの温度反応には差が認められなかった.
  • 桂 直樹, 高柳 謙治, 佐藤 隆徳
    1986 年 55 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    サトイモは自然条件では着花•結実しにくいことが知られている. 事実, 国内各地から収集した品種 (系統)の中で, 着花するものはエグ芋•土垂群の中の数系統に限られ, しかも毎年同じ系統であった. このような日本のサトイモ栽培品種に対して200ppm及び1,000ppmのジベレリン (GA) を生長点付近に微量注入したところ, 大部分の品種で花成を誘導することができた. ′石川早生丸′, ′愛知早生′, ′三州′, ′大吉′のような三倍体品種, ′えび芋′, ′竹の子芋′のような二倍体品種で花成が認められた. 用いたすべての品種 (系統) でGA処理による生殖生長への転換が認められたが, 着花しにくい品種では止葉形成あるいは肉穂花を欠如する花序にとどまるものもあった. また, 着花が多かった′竹の子芋′では異常花序も形成された. これらの結果から, 着花の難易, GAに対する反応程度は共に遺伝的な性質であると考えられた. また花成の程度が品種より種々の段階を示すことから, サトイモにおける花成の誘導過程は"all-or-none"型でなく, むしろ連続的な過程にあると結論された.
    GAにより誘導された花序の形態は過去の報告と類似していた. 附属体長あるいは附属体長/雄器官長比による品種の分類について考察した.
  • 今西 英雄, 奥 安則, 植村 修二
    1986 年 55 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 収穫後のフリージア球茎, ダッチ•アイリス及び黄房スイセンの鱗茎に対して, 燃焼材料, 処理室の密閉度が異なる5種のくん煙処理を行い, その処理効果を比較するとともに, くん煙中のガス組成の分析を行い, ガス組成と処理効果との関係を明らかにしようとした.
    2. フリージアではいずれのくん煙処理法によっても発芽が促進されたが, 煙の存在時間が短かった処理法では発芽促進効果が低く, また煙が長時間存在する処理法でも効果がやや劣った.
    3. ダッチ•アイリスでは煙の存在時間が短い処理法でわずかに効果が劣ったとはいえ, いずれの処理によっても小球の開花率が著しく高まった.
    4. 黄房スイセンの小球は無処理及び密開度が高く,煙が長時間存在する処理法ではほとんど開花しなかったが, 他の処理法ではいずれも高い開花率が得られた.
    5. くん煙中のガス組成を分析した結果, メタン, エタン, エチレン, プロピレン及び一酸化炭素が検出され,これらのガスの濃度及び存在時間には, くん煙法の違いによりかなりの差異が認められた.
    6. くん煙中に含まれるこれらガス体の単独気浴処理実験で得られた結果とあわせ考察すると, くん煙処理の効果はエチレンによりもたらされるとの結論に達した.また上述の処理効果の違いは, エチレンの存在時間の差異によるものであると推察された.
  • 坂田 祐介, 有隅 健一, 宮島 郁夫
    1986 年 55 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ツバキ属植物のアントシアン色素としては従来の二次元展開の薄層 (セルロース) クロマトグラフィー法を援用すると, 合計14個のスポットを検出できる (11). このうちスポット1はシアニジン3-グルコシドでヤフツバキやユキッバキの主要色素である. ところが, ユキツバキの花弁に含まれるこのスポットを高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法で分析したところ, シアニジン3-グルコシドの他にシアニジン3-ガラクトシドが検出された. ツバキ属植物でのこのシアニジン3-ガラクトシドの存在の確認は初めてのことである.次いで, ヤブツバキ, ユキツバキ, サザンカ及びハルサザンカの園芸品種におけるシアニジン3-ガラクトシドの分布の様相を調べたところ, 総色素に対するシアニジン3-ガラクトシド量はヤブツバキで12%, ユキツバキで34%, サザンカで1%及びハルサザンカで7%であった. つまり, ユキツバキは他品種群に比較して高いシアニジン3-ガラクトシドの含有率を示す点で特徴的であった.
    また, 各園芸品種群のシアニジン3-グルコシドとガラクトシドの量に関して個体の分散をみると, ユキツバキでかなり幅広い変異が見られたことも特徴的であった.
    以上の結果は, 前報 (11) で述べた二次元薄層クロマトグラム上の各色素スポットと同様, シアニジン3-ガラクトシドもまたツバキ属植物の種や品種群を分類するための指標として使用できることを示唆している.
  • 板村 裕之
    1986 年 55 巻 1 号 p. 89-98
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 発育段階の異なるカキ‘平核無’果実を用いて,果実の生理活性の指標となる呼吸量, エチレン生成量を,採取後無処理のものと, 30%アルコール脱渋処理をしたものの2区について測定し, あわせて果実のヘタ脱落や軟化についても観察した.
    2. 果実はその最大横径の推移からみて, 6月上旬から8月末ごろまでがステージI, 8月末ごろから9月20日ごろまでがステージII, 9月20日ごろから11月初めまでがステージIII, それ以降がステージIVの各発育段階に分けられた. 樹上における果実の果肉硬度は, ステージIIまで漸減した後, ステージIII以降やや低下速度が速くなった. ステージIV以降の果実では樹上で急速に軟化が進行し, 12月初めには熟柿の状態となった. 9月20日ごろより果実の着色が始まり, その後急速に着色が進行した.
    3. 採取後, 20°C定温室にて果実を貯蔵したとき, 未熟果は完熟果に比べて呼吸量が高く推移し, エチレン生成のピークが早く現れると同時に, そのピーク値もかなり高い値を示した. それと平行して, ヘタの脱落が認められ, 果実の軟化も急速に進行した.
    4. 採取後, 果実に30%アルコール蒸気による脱渋処理を行うと, 無処理の果実に比べて呼吸量が高く推移するとともに, 処理後2~3日でエチレン生成のピークが形成された. それと平行して軟化速度も早くなり, 未熟果においてはエチレン生成のピーク付近において, 果実の急速な軟化とヘタの脱落が認められた. このことより, アルコール処理は, 採取後無処理の果実に起こる種々の生理的変化を促進する役割を果たすと思われた.
    5. 採取後, 果実に30%アルコール処理を行うことによって, 熟度の異なる果実の呼吸活性やエチレン生成能 (生理活性) と, 果実の生理的変化を調査した. その結果, ステージIIの未熟果は生理活性が高く, アルコール処理によってヘタの脱落と急速な果実の軟化が起こった. 着色開始期のステージIIからステージIIIにかけての果実 (9月中旬ごろ) は, 個々の果実間で生理活性が大きく異なり, 果実の軟化やヘタの脱落の有無などにもかなり大きな変異が認められた. ステージIIIに入った9月下旬ごろより急速に果実の生理活性が低下し, それと平行してヘタの脱落が認められなくなり, 果実の軟化もかなり緩慢となった. その後, 熟度が進むに従って果実の生理活性が低下し, アルコール脱渋後の貯蔵性は完熟期において最高となった. 落葉期以後, 樹上で果実が軟化するに従って果実の貯蔵性も低下した.
    6. アルコール脱渋後, 急速に軟化する果実が混入する危険性がなくなる時期は, 山形県庄内地方においては満開後120日ごろの10月10日ごろであると思われた.
  • 中村 怜之輔, 稲葉 昭次, 伊東 卓爾, 今永 孝
    1986 年 55 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマトとナシ果実について, 1Gと3Gで5時間の振動処理を行い, 振動中及びその後の有機酸含量の変化を調査した. さらに, 有機酸の変動と関連して, トマトではグルタミン酸含量の変化もあわせて調査した.
    トマトとナシのいずれも, 振動によってクエン酸及びリンゴ酸の短時間での急激な減少が認められ, とくにその程度は3G区で著しかった. この場合, クエン酸は振動開始直後に一時的に増加した後に急減する傾向がみられ, この現象はとくにトマトの3G区で明確であった.α-KGはトマト及びナシのいずれも3G区では振動開始とともに増加し, 振動中は高レベルに保たれたが,振動終了後は復元する傾向であった. トマトのグルタミン酸含量は3G区で全体的に高く, さらにその変化様相はクエン酸の一時的増加とその後の急減に時間的にやや遅れる形でよく対応した動きが認められた.
    これらのことから, 3G振動によってTCAサイクルの停滞とそれに続く別の経路の活性化が起こっている可能性が推察され, その結果グルタミン酸の一時的蓄積とクエン酸の急激な減少が誘起されるのではないかと推察した.
  • 尾形 亮輔
    1986 年 55 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
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