園芸学会雑誌
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振動によるトマトとナシ果実の有機酸含量の変化
中村 怜之輔稲葉 昭次伊東 卓爾今永 孝
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1986 年 55 巻 1 号 p. 99-103

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抄録

トマトとナシ果実について, 1Gと3Gで5時間の振動処理を行い, 振動中及びその後の有機酸含量の変化を調査した. さらに, 有機酸の変動と関連して, トマトではグルタミン酸含量の変化もあわせて調査した.
トマトとナシのいずれも, 振動によってクエン酸及びリンゴ酸の短時間での急激な減少が認められ, とくにその程度は3G区で著しかった. この場合, クエン酸は振動開始直後に一時的に増加した後に急減する傾向がみられ, この現象はとくにトマトの3G区で明確であった.α-KGはトマト及びナシのいずれも3G区では振動開始とともに増加し, 振動中は高レベルに保たれたが,振動終了後は復元する傾向であった. トマトのグルタミン酸含量は3G区で全体的に高く, さらにその変化様相はクエン酸の一時的増加とその後の急減に時間的にやや遅れる形でよく対応した動きが認められた.
これらのことから, 3G振動によってTCAサイクルの停滞とそれに続く別の経路の活性化が起こっている可能性が推察され, その結果グルタミン酸の一時的蓄積とクエン酸の急激な減少が誘起されるのではないかと推察した.

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