園芸学会雑誌
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tert.-Butylhydroperoxide 処理による赤ビート切片からのベタシアニン リーケージの諸性質
松尾 友明米田 敏幸伊藤 三郎
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1986 年 55 巻 3 号 p. 332-338

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抄録
老化や生理障害の初期に見られるリーケージ現象の発生機構に関する知見を得るために, 赤ビート切片を生理的条件下でtert.-ブチルヒドロパーオキシド (t-BHP) で処理することにより, ベタシアニン色素のリーケージを起こすモデル実験を確立し, その諸性質を検討した.
1. 赤ビート切片 (サイズ: φ13mm×1.5mm) を0.2Mマンニトールとストレプトマイシン (0.5μg/ml) を含むMES-NaOH緩衝液 (pH 5.8) に浸漬し, 20°Cで暗所中4日間放置しても, ベタシアニンのリーケージ (OD 540nmの増加) は全く認められなかった.
2. この実験で, t-BHPの処理濃度 (2-10mM) と処理時間 (2~8時間) を変えることにより, 任意の時期にリーケージを起こすことができた.
3. ベタシアニンのリーケージに前後して, カリウムイオン•還元糖•UV 260nm吸収物質•タンパク質も漏出したが, その漏出順序は分子サイズに関係していると考えられた.
4. このベタシアニン リーケージは顕著なpH依存性を示し, 中性付近に比べてpH 5.8以下ではより早くリーケージが発生した.
5. カルシウムイオン•スペルミン•グルタチオンが処理時期によって効果的にベタシアニン リーケージを抑制したが, それらの作用様式は異なっていると推測した.
以上のように, この赤ビート切片を用いたモデル実験は, リーケージを様々な観点から研究する上で極めて有用なことが明らかとなった.
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