キュウリの子房の曲がりが発生する仕組みについて器官配列の面から検討した.
1. 主茎の第3葉が左の株と右の株とが認められた. それぞれの出現率はほぼ1対1であった. 葉序2/5, 開度144度で, 第3葉が左の株では左回り, 右の株では右回りに回転していた.
2. 主茎の葉序が左回りの株では, 第一次側枝の葉序は右回り, 第二次側枝の葉序は左回りであった. 主茎の葉序が右回りの株では, それぞれ左回り, 右回りであった. また, 主茎, 側枝を問わず, 巻きひげは葉序が左回りの茎では葉の左側に, 葉序が右回りの茎では葉の右側に発生していた.
3. 節間の横断面の形態は五角形状で, 左右性が認められた. 五角形状の節間は, 葉序が左回りの茎では左回りに, 葉序が右回りの茎では右回りに, 1節間上位に移るごとに144度回転していた.
4. 雌花はがく片5枚, 花弁5枚, 柱頭3対, 心皮3枚のものが最も多かった. それぞれの開度は均一でなく, その大きさに一定の偏りと左右性が認められた.
5. 子房の周辺部の花托部を縦走する維管束が10本観察された. それぞれ5枚のがく片と5枚の花弁の中央基部に連絡していた. がく片, 花弁と同様に, それらの開度にも一定の偏りと左右性が認められた. 特に, 心皮の場合, 巻きひげ側の心皮が最も小さく, 巻きひげと反対側の心皮が最も大きかった.
6. 子房の曲がりは, 巻きひげの左右性に従って, ほとんどの場合, 巻きひげ側に認められた.
以上の結果, キュウリの子房の曲がる方向と器官配列の左右性との間に密接な関係が認められた.
抄録全体を表示