抄録
エタノールのみまたはエチレンと併用して処理したカキ果実を5~40°Cの異なる温度の恒温室内に置き, 脱渋及び追熟期間中の果実形質その他の変化を調査した.
果実のタンニン含量の減少は高温下ほど速く, その速度は温度が10°C上昇すると約1.9倍になった.
果肉の硬度は, 最初は緩やかに低下し, その速度は15~40°Cに比べて10°Cではやや遅く, 5°Cではかなり遅くてほとんど認められないほどであったが, その後は急速に低下し, その速度は5~25°Cでは相違がほとんど認められなかった. 10°Cでは, 急速な硬度低下が15~30°Cより早く始まり, 軟化した果肉は水浸状を示す傾向が認められた.
果皮のクロロフィル含量の減少は15°C付近で速く,低温の5°Cと高温の30°Cではともに遅かった. 一方, カロチノイド含量の増加は, 5~30°Cでは高温下ほど速かった. なお, 果皮にはリコピンがほとんど含まれていなかった.
硬度低下はエチレン処理果の方が無処理果より早かった. エチレン処理により促進された硬度低下の促進程度は, その後いずれの温度下に移しても, ほとんど変わらずほぼ一定で経過した.
ダンボール箱内のエタノールガス濃度は, アルコール溶液を散布した後急上昇して約1時間後にピークに達し, その後急速に低下した. この変化は, 高温下ほどいくらか速かった. 散布したエタノールのほとんどは, 低温の10°Cでも3日以内に果実内に浸透すると推定された.