園芸学会雑誌
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加温時期の異なるブドウ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’の根の生長及びその活性に及ぼす地温の影響
久保田 尚浩江川 俊之島村 和夫
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1987 年 56 巻 3 号 p. 280-286

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抄録
イブリ•フランを台木とした鉢植えの4年生ブドウ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’について, 地温を12月加温では4段階(13, 20, 27, 34°C), 2月加温では2段階(13, 27°C) に調節し, 地上部及び地下部の生長を調査した. また, 13°C区と27°C区の細根について代謝活性と呼吸活性を経時的に測定した. 比較のために無加温樹の細根についても同様の調査を行った.
1. 12月, 2月加温ともに13°C区よりも27°C区で発芽が早く, 発芽率が高く, 新梢生長がすぐれ, 特に12月加温において地温による差が大きかった. 花穂の発育は, 12月加温では13°C区よりも27°C区ですぐれたが, 2月加温では地温間での差は小さかった.
2. 新根の発生は, いずれの加温時期でも13°C区よりも27°C区で, またいずれの地温区でも12月加温よりも2月加温で早かった. 根の生長も新根発生とほぼ同様な結果であった. 新根の形状は, 20, 27°C両区では中太で比較的長いのに対し, 13°C区ではこれよりもさらに太く, また34°C区では細く短かった. 27°C区の新根は13°C区よりも中心柱の発達がすぐれた.
3. 根の代謝活性は, 無加温樹では12月から3月までは低く推移し, 発芽期から開花期にかけて著しく増大した. 処理開始後の活性の増加は, いずれの地温区でも12月よりも2月加温で, またいずれの加温時期でも13°C区よりも27°C区で速やかであった. 12月, 2月加温ともにいずれの測定日においても13°C区よりも27°C区で常に高い活性を示した. 呼吸活性の変化も代謝活性とほぼ同様であった.
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