園芸学会雑誌
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56 巻, 3 号
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  • 八巻 良和
    1987 年 56 巻 3 号 p. 263-267
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    4種 (類) のカンキツ果実について果汁の全酸濃度, 遊離酸濃度, および結合酸濃度を測定し, 相互間の相関関係を明らかにした.
    いずれの種 (類) においても全酸濃度と遊離酸濃度の相関は著しく高く, 両者間には係数が1に近い一次回帰式が得られた.
    この一次回帰式により, 測定が最も容易な遊離酸濃度の値から全酸濃度を小さな誤差の範囲内で推定できると思われる.
  • 不和合反応における柱頭の重要性
    山下 研介
    1987 年 56 巻 3 号 p. 268-272
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハッサクの自家不和合性について二, 三の基礎的実験を行い, 次のような知見を得た.
    1. 自家ならびに他家受粉を行って15分後の成蕾雌ずい中に含まれる糖タンパクを等電点電気泳動で分析したところ, 枯頭, 花柱, 子房のいずれの部位についても, 両受粉区間に差が認められた. しかしながら, その差は受粉後30分におけるほど顕著ではなかった.
    2. 花柱や子房を切り落した成蕾雌ずいに自家受粉を行っても, 自家花粉管の伸長は促進されず, ほとんどすべての花粉管は柱頭内で伸長を停止した.
    3. 幼蕾柱頭に, 晩白柚成蕾の柱頭粘液を塗布した後自家受粉を行ったところ, 多数の自殖種子が得られた.
    以上の結果, ハッサクの不和合反応において柱頭の果す役割が, きわめて重要であることが示唆された.
  • 山田 寿, 向井 啓雄, 杉浦 明, 苫名 孝
    1987 年 56 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    土壌乾燥の開始時期(10, 11, 12月) と期間(1~3か月) がカラタチ台‘宮川早生’と‘川野なつだいだい’実生の時期別(11, 12, 1月) の耐寒性に及ぼす影響を調査するとともに, 組織内の成分変化との関連について検討した.
    1. 灌水区においては11月から1月にかけて徐々に蒸散が減少するとともに葉の水ポテンシャルが低下したが, 土壌乾燥処理区ではいずれの時期においても灌水区よりも蒸散が少なく, 水ポテンシャルも低かった. また, 10月15日及び11月15日から土壌乾燥を開始した区で落葉が認められた.
    2. 11月や12月にはそれ以前からの土壌乾燥処理によって葉, 茎, 根の各組織の全糖とプロリン含量が増加する傾向が認められたが, 1月には10月15日からの乾燥区あるいは11月15日からの乾燥区で灌水区よりも葉と茎の全糖含量が低かった. しかし,‘川野なつだいだい’の各組織のプロリン含量は1月においてもこれらの乾燥区で高かった. 一方, でんぷん含量はいずれの時期とも土壌乾燥区で低い傾向が認められた.
    3. 11月や12月までの土壌乾燥処理は耐寒性を増大させたが, 1月までの処理では12月15日からの乾燥区で茎の枯死率が灌水区よりもやや低かったものの, 10月15日及び11月15日からの乾燥区では灌水区よりも耐寒性が弱かった.
    4. 本実験の結果から, 比較的気温が高くまだ十分に耐寒性を獲得していない時期には土壌乾燥処理はある程度低温の代替効果を持ちカンキツの耐寒性を増大させるが, 自然の低温により十分に耐寒性が強まると乾燥の効果は低下し, 土壌乾燥が長期にわたった場合にはかえって耐寒性を低下させることが明らかとなった. また, これらの耐寒性の変化と葉や茎の糖含量の変化とが密接に関係していることが示唆された.
  • 久保田 尚浩, 江川 俊之, 島村 和夫
    1987 年 56 巻 3 号 p. 280-286
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    イブリ•フランを台木とした鉢植えの4年生ブドウ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’について, 地温を12月加温では4段階(13, 20, 27, 34°C), 2月加温では2段階(13, 27°C) に調節し, 地上部及び地下部の生長を調査した. また, 13°C区と27°C区の細根について代謝活性と呼吸活性を経時的に測定した. 比較のために無加温樹の細根についても同様の調査を行った.
    1. 12月, 2月加温ともに13°C区よりも27°C区で発芽が早く, 発芽率が高く, 新梢生長がすぐれ, 特に12月加温において地温による差が大きかった. 花穂の発育は, 12月加温では13°C区よりも27°C区ですぐれたが, 2月加温では地温間での差は小さかった.
    2. 新根の発生は, いずれの加温時期でも13°C区よりも27°C区で, またいずれの地温区でも12月加温よりも2月加温で早かった. 根の生長も新根発生とほぼ同様な結果であった. 新根の形状は, 20, 27°C両区では中太で比較的長いのに対し, 13°C区ではこれよりもさらに太く, また34°C区では細く短かった. 27°C区の新根は13°C区よりも中心柱の発達がすぐれた.
    3. 根の代謝活性は, 無加温樹では12月から3月までは低く推移し, 発芽期から開花期にかけて著しく増大した. 処理開始後の活性の増加は, いずれの地温区でも12月よりも2月加温で, またいずれの加温時期でも13°C区よりも27°C区で速やかであった. 12月, 2月加温ともにいずれの測定日においても13°C区よりも27°C区で常に高い活性を示した. 呼吸活性の変化も代謝活性とほぼ同様であった.
  • 山田 昌彦, 山根 弘康, 平林 利郎
    1987 年 56 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    へたすきと果頂裂果について5年間および3年間連続調査したそれぞれ24および35実生の年次変異の特徴からカキの交雑育種におけるその淘汰•選抜基準について検討した.
    これらの形質は, その障害程度に従って各果を4または5段階に分類し, 10果の平均スコアによってへたすき指数および果頂裂果指数を表した.
    へたすき指数と果頂裂果指数の交雑実生調査における年次変異の特徴はほぼ同様であった. すなわち, 5または3年間調査した場合の平均値の大きい実生ほど年次変異が大きくなった. そして, 遺伝子型と年との交互作用が大きいと考えられた.
    これらの障害については1年の調査でも著しく大きな指数が得られた場合は, その実生の遺伝的な障害発生程度もかなり大きいと考えられるため, 早期に淘汰できる. しかし, 短年月の調査で障害発生の少ない選抜実生については, 比較的長年月の調査による評価が必要であると考えられた.
  • 山田 昌彦, 栗原 昭夫, 角 利昭
    1987 年 56 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カキの結実性の有効な調査法を見出すため, カキの結実性の品種間差異とその年次変動の生じ方を検討した. 材料には17品種を用い, 葉蕾比15程度にそろえた各50花程度を供試し, 受粉区と花粉遮断区を設けて結実率を調査した.
    1. 供試品種の中には‘興津15号’を除くと後期落果の著しい品種は無かったので, 本報での受粉区及び花粉遮断区の結実率は主として早期落果に対する結実性の品種間差異を表していた.
    2. 花粉遮断区の結実率の年次変動は著しく大きく, 品種によっては9%から84%の年次変動を生じるものがあったが, 年次変動は供試品種全体が平行移動的に生じ, 遺伝子型と年次との交互作用は小さいと考えられた.
    3. 受粉区の年次変動は花粉遮断区と比べて小さかったが, 花粉遮断区の結実の不良な1981年には受粉区も全体として結実不良となった.
    4. 受粉区の収穫果の種子形成力を表した場合, その年次変動は小さく, 各年の種子形成力と3年間の平均種子形成力との相関係数も0.95~0.97と高かった.
    5. 種子形成力の受粉区の結実率の間には供試品種群全体としての相関関係は無かったが, 全体に結実の不良となった1981年には単為結果力の低い品種群における種子形成力と受粉区の結実率との相関は高かった (r=0.87*).
    6. カキの育種において受粉区および花粉遮断区を設けて結実率を調査する方法は, 対照品種群を合わせて調査することにより, 早期落果に対しては比較的短年で結実性を把握できると考えられた.
    7. 種子形成力を受粉区の収穫果の種子数によってとらえる方法は, 多くの場合に早期落果時における種子形成力の品種間差異の指標として有効であると思われ, また, 遺伝変異に対する年次変異が小さいため, 短年間で評価できると考えられた.
  • 山下 研介, Thierry GAUDE, Christian DUMAS, Charles GRASSELLY, Patrice CROS ...
    1987 年 56 巻 3 号 p. 300-305
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. アーモンドの自家和合性遺伝子Sfの起原と伝播ならびにアーモンド数品種のS遺伝子組成に関する我々の仮説を実証することを目的として, 新しく開発された銀染色法を用いた等電点電気泳動法ならびにSDS-PAGE法によって, 雌ずいならびに花粉のタンパクを分析した. その結果, Amygdalus webbii と‘Tuono’ に共通のいくつかのタンパクバンドが存在し, 前者から後者へSf遺伝子が伝えられた可能性が示唆された. 又, その他の品種, 系統についての分析結果より, S2,S3,S4に関与すると思われるいくつかのタンパクバンドも認められ, 今後さらに検討を加えることによって, 仮説の妥当性が実証されるものと思われた.
    2. S遺伝子組成がいずれもS1S3と思われるアーモンド4品種 (系統) 間で人工受粉を行い, 雌ずい内の花粉管伸長を蛍光顕微鏡で観察した. その結果, これらの交配組み合わせでは, 柱頭への花粉の付着は不良で, 花粉管伸長に際してカロースの管壁への蓄積がきわめて不良であった. このことより, 484系統,‘Ferraduel’,‘Ferralise’ならびに892系統間には, 交配不和合性が存在するもと思われた. アーモンドの不和合反応においては, 柱頭がきわめて重要な役割を果しているものと思われる.
  • 第2報 生理的差異について
    細木 高志, 土橋 豊, 浅平 端
    1987 年 56 巻 3 号 p. 306-312
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    耐乾性の強いメロンと弱いメロンの間に, どのような生理的差異があるのか検討した.
    耐乾性の強いメロンは遊離した葉肉細胞の耐浸透圧が高く, 断水テストによる葉のWSDとの相関がきわめて局かった.
    耐乾性の強いアメリカキャンタロープ系の‘Howell’は, ABA, サイトカイニンおよびジベレリン処理に対して敏感に反応し, 葉の蒸散抵抗が変化した. 一方, 耐乾性の弱い日本の桂大白瓜では, そのような変化がみられなかった.
    水分ストレスのない条件で,‘Howell’と桂大白瓜の葉からABAとジベレリンを抽出すると,‘Howell’の方が両ホルモンともやや多かった. 水分ストレスを与えると, 桂大白瓜のABAは‘Howell’より早く増加し, ジベレリンは両メロンとも同程度ずつ減少していった. 葉のサイトカイニン含量は, 水分ストレスを与える前, ‘Howell’と桂大白瓜で同程度含まれていたが, 水分ストレスを与えると‘Howell’の方が早く減少した.
  • 石井 現相, 西條 了康
    1987 年 56 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ダイコン根部のイソチオシアネート含量に及ぼす栽培条件の影響を検討し, 下記の結果を得た.
    1. イソチオシアネート含量は発芽後日数が早いほど高い傾向があった.
    2. 春まきと晩夏まき栽培し, 根重がほぼ同じ大きさに達した段階でのイソチオシアネート含量を比較したところ, 春まきが晩夏まきよりも高かった.
    3. 黒ボク土と沖積土で栽培し, 収穫時期を同じにしてイソチオシアネート含量を比較すると, 後者が前者よりも高かった.
    4. 硫酸イオン供給濃度を5段階に変えてポット栽培した結果, イソチオシアネート含量との間にほぼ正比例の関係がみられた.
    5. ポリマルチ栽培はイソチオシアネート含量を増加させる傾向がみられた.
    6. 栽植密度の影響はなかった.
  • 加納 恭卓
    1987 年 56 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    源助ダイコンを高温期には種した場合, 根部の中心部が縦に空洞となる空洞症の発生原因を明らかにするため, 1984年と1985年の7月, 8月および9月の3ケ月にわたり15日間おきには種し, 根部の生育ならびに空洞発生について調査し, さらにパイピングした水道水で地温を低下させたうねに1984年の7月と8月には種し同様な調査を行った.
    1. 1984年, 1985年とも最高気温•地温ともに7月31日から8月15日の期間で最も高かった. うねの冷却処理を行った場合, 地温はこの時期の対照区に比べて約6°C低く, 全生育期間を通じて最高でも25.9°Cであった.
    2. は種後60日目の根重は, 1984年では7月17日に, 1985年では7月1日には種した場合に最も大きくなった. 空洞症には空洞内部が黒褐色に着色したものと, まったく着色していないものの2種類があった。空洞発生率は, は種後20-30日目ごろから増大しはじめた. 1984年, 1985年ともは種後60日目の空洞発生率は, 7月上旬から中旬には種した場合最も高く, 7月下旬以降のは種では低くなった.
    3. うねの冷却処理を行った場合, は種後60日目では対照区に比べ空洞発生率は低くなり, とくに7月中のは種では空洞発生率の低下が著しかった.
    これらのことより, 源助ダイコンの根部における空洞の発生には高地温が重要な働きをしているものと考えられる.
  • 荒木 陽一, 五島 康
    1987 年 56 巻 3 号 p. 328-333
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    野菜の水ポテンシャルを水管理の指標にするために, プレッシャーチャンバーの適用方法について検討した. 対象野菜としては, 水管理が特にその生育並びに収量に大きな影響を及ぼすと考えられているトマトを供試した.
    1. プレッシャーチャンバー法における加圧方法としては, 初めに加圧速度を事前に決定した値にセットし, 次に操作バルブを加圧側にする従来型と, 先に操作バルブを加圧側にし, 次に加圧速度調節バルブを開く改良型の二つの方法があるが, トマトに対しては改良型の方法が適していると考えられた.
    2. 従来型の方法を採る場合には, 加圧速度として0.3~0.5kg/cm2/sが適当であると考えられた.
    3. プレッシャーチャンバー法とサイクロメーター法を比較した場合, プレッシャーチャンバー法で得られた値の方が, サイクロメーター法による値よりも常に低かった. これはサイクロメーター法に問題があり, ApoplasticWater による水蒸気圧の上昇に原因があると考えられた.
    以上の結果, トマトの体内水分状態はプレッシャーチャンバー法で簡易に測定できると考えられた.
  • 坂田 好輝, 西尾 剛, 高柳 謙治
    1987 年 56 巻 3 号 p. 334-338
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマト (Lycopersicon esculentum Mill.) 品種ポンデローザの葉肉プロトプラストの培養条件について検討を行った.
    葉肉プロトプラストの材料として無菌的に育成した実生苗を用いた. 播種後5週目の苗の子葉及び本葉を小さく切り刻み, 0.5%セルラーゼオノヅカRS及び0.1%ペクトリアーゼY-23を組み合わせた酵素液を用いて, 27°C, 40spmの速さでゆっくりと3時間半振とうすることにより, 活性の高いプロトプラストが単離された.
    1/4に希釈した MURASHIGE & SKOOG (1962) 培地の有機物, 8p (KAO & MICHYLUK 1975) 倍化の有機物, 1mg/lNAA, 0.5mg/lBA, 1%ショ糖及び0.4Mマンニトールを組み合わせた培地中に, 精製したプロトプラストを1.0×105個/mlの密度で懸だくし, 29°C, 暗黒条件下で培養を行った.
    プロトプラスト単離後4~7日間のうちに第1回目の細胞分裂が認められ, 以後25°C, 300luxの培養条件下に移し, さらにマンニトールを含まない培地を3日毎に加えていくことにより, 30日目には, 直径0.5~1mm大のカルスが得られた. カルスの形成率は, プレートしたプロトプラスト数に対し, 約1%であった.
    これらのカルスを, 1mg/lゼアチン, 0.02mg/lGA, 2%ショ糖及び0.8%寒天を含むMS培地に移植し, 25°C, 2,000luxの培養条件下で育成したところ, 18日目には, 0~2枚の葉を分化した不定芽が形成された.
    伸長した茎葉を0.2mg/lGA, 2%ショ糖及び0.8%寒天を含むMS培地に移植し, 発根を促した後, 鉢あげし, 完全な植物体を得た.
    以上の培養実験により, トマト品種ポンデローザの葉肉プロトプラストから植物体を再生するための基本的条件が明らかにされた.
  • 箱田 直紀
    1987 年 56 巻 3 号 p. 339-343
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    サザンカの品種分化の過程を明らかにする目的で, ツバキ属植物13種1亜種2変種, 種間雑種4品種及びサザンカとヤブツバキの97園芸品種を用いて, 葉のパーオキシダーゼ•アイソザイムを調査した.
    ツバキ属各種のパーオキシダーゼ•ザイモグラムについては, 種間や節間で差のないものもみられたが, サザンカが含まれる Paracamellia 節とヤブツバキの属するCamellia 節の種ではそのザイモグラムに明瞭な差異が認められた. 種間雑種のザイモグラムには, 両親となった種のもつバンドがともに現れた.
    狭義のサザンカ群品種のザイモグラムは九州や四国に自生するサザンカのそれに酷似していた. ハルサザンカ群品種の多くはサザンカとヤブツバキの両種に特有なザイモグラムバンドをあわせて保持しており, これら品種が両種の種間雑種起源であることを示唆していると考えられた. カンツバキ群品種中にはサザンカ群品種あるいはハルサザンカ群品種と同一のザイモグラムを示す品種が含まれていた.
    これらの結果から, 現在のサザンカ品種はサザンカ自生種のみから発達したものではなく, サザンカとヤブツバキの種間雑種が起源となり, それら雑種間での相互交雑や戻し交雑がくり返された結果変異が拡大したものと考えられた.
    タゴトノツキ群の′田毎の月′はユチャのザイモグラムと同様であったが, 他の Paracamellia 節の種とも差が認められなかった.
  • 傅 炳山, 一井 隆夫
    1987 年 56 巻 3 号 p. 344-351
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    成熟期におけるナルトミカン (Citrus medioglobosa hort. ex. Tanaka) のフラベド組織の中性, リン及び糖脂質の脂肪酸組成と量の変化を調べた. また, 貯蔵果を用いて, 老化並びに温度との関係を検討した.
    2年 (1982年と1984年) とも, 10月から冬季の中期までの着色期に各脂質の18:2 (リノール酸) 組成が増加し, 18:3 (リノレイン酸) 組成及び18:3/18:2比が減少した. 以後, 回青期に入ると, この傾向が逆転した. 1984年の糖脂質では, このような逆転はみられなかった脂肪酸の不飽和度は冬期に中性脂質では減少したが, 糖脂質及びリン脂質は, 減少がみられなかった. 各脂質とくに中性及びリン脂質の脂肪酸量は, 冬期に顕著に増加した.
    貯蔵中, 18:2組成が日数に伴って増加し, 18:3組成及び18:3/18:2比が減少した. GA処理によって, 果皮の老化並びに18:3組成及び18:3/18:2比の減少が遅れた. 5°C貯蔵では, 各脂質の18:3組成及び18:3/18:2比が20°Cより高い値を示した. また, リン脂質及び糖脂質の脂肪酸量は低温ほど多く, 糖脂質では5°Cは20°Cの約2倍を示した.
    以上の結果からナルトミカンのフラベド組織の脂肪酸の18:3組成及び18:3/18:2比は老化及び温度に伴って変化することがわかった. また, 冬期の各脂質の脂肪酸量の著しい増加は低温によるものと考察した.
  • 兵藤 宏, 相沢 彩恵子, 青 真一
    1987 年 56 巻 3 号 p. 352-355
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キウイフルーツ (Actinidia chinensis Planch. cv. Hayward) のエチレン生成量は21°Cで0.1μlkg-1h-1の限界値を越えた後急激 (指数関数的) に増大した. 顕著なエチレン生成は果実の追熟と密接な関連を有している. 収穫直後の果実では0.1μlkg-1h-1の限界値を越すのにかなりの時間を必要とし, また個体間の差異がかなりみられたが (15.9±12.1日), 果実を低温下 (2°C) で貯蔵することにより, 常温 (21°C) に移した後のエチレン生成はかなり早まり, 個体間のばらつきも小さくなった (6ケ月貯蔵後, 2.1±1.3日). キウイフルーツでエチレン生合成の中間体とみなされる1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸 (ACC) およびN-マロニル-ACC (MACC) の果実中の含量は個体果実のエチレン生成量が0.2nmol-1g-1h-1 (4.8μlkg-1h-1) まではほぼ一定値 (0.6nmolg-1と2nmolg-1) であったが果実のエチレン生成量が上記の値を越すにつれ共に平行して増大した. この時MACCの含量はACCの含量より5倍以上高かった. エチレン生成酵素 (EFE) の活性は果実のエチレン生成量と密接な相関を有し, 果実のエチレン生成量の増大と比例して著しく増加した. これらの結果は前報で述べたキウイフルーツにおけるエチレン生合成はメチオニン-ACC経路を通るという結論を支持するものと思われる.
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