園芸学会雑誌
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パーオキシダーゼ•アイソザイムによるサザンカ品種とツバキ属の種との類縁関係について
箱田 直紀
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1987 年 56 巻 3 号 p. 339-343

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抄録

サザンカの品種分化の過程を明らかにする目的で, ツバキ属植物13種1亜種2変種, 種間雑種4品種及びサザンカとヤブツバキの97園芸品種を用いて, 葉のパーオキシダーゼ•アイソザイムを調査した.
ツバキ属各種のパーオキシダーゼ•ザイモグラムについては, 種間や節間で差のないものもみられたが, サザンカが含まれる Paracamellia 節とヤブツバキの属するCamellia 節の種ではそのザイモグラムに明瞭な差異が認められた. 種間雑種のザイモグラムには, 両親となった種のもつバンドがともに現れた.
狭義のサザンカ群品種のザイモグラムは九州や四国に自生するサザンカのそれに酷似していた. ハルサザンカ群品種の多くはサザンカとヤブツバキの両種に特有なザイモグラムバンドをあわせて保持しており, これら品種が両種の種間雑種起源であることを示唆していると考えられた. カンツバキ群品種中にはサザンカ群品種あるいはハルサザンカ群品種と同一のザイモグラムを示す品種が含まれていた.
これらの結果から, 現在のサザンカ品種はサザンカ自生種のみから発達したものではなく, サザンカとヤブツバキの種間雑種が起源となり, それら雑種間での相互交雑や戻し交雑がくり返された結果変異が拡大したものと考えられた.
タゴトノツキ群の′田毎の月′はユチャのザイモグラムと同様であったが, 他の Paracamellia 節の種とも差が認められなかった.

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