抄録
ウンシュウミカン果実の砂じょうの発達過程を光学顕微鏡並びに透過型電子顕微鏡観察によって解剖学的に調べ, アルベド組織中の外周維管束からの溶質の転流機構について検討した. 砂じょうは開花直前に心室内壁より突起した. 砂じょう突起において, 内果皮の表皮細胞では主として垂層分裂がみられ, 下表皮層では垂層分裂や並層分裂がみられた. 砂じょうの長さが約0.7mmに達した段階で砂じょうの袋状の部分と柄の分化が認められるようになった. また, 砂じょうが伸長するにつれて,柄の表皮細胞で柄の軸方向への細胞分裂がみられた. 砂じょう中への可溶性固形物の蓄積は砂じょうの大きさが最大に達したころに開始した. 砂じょう柄中には維管束や仮導管組織はみられなかったが, 砂じょう柄の柔組織細胞の薄い細胞壁には数多くの原形質連絡が認められた.