抄録
ウンシュウミカンの用途を拡大する目的で, ミカンワインの試験製造を行った. アルコール発酵期間中のもろみの数種性状の変化を調べ, 次のような結果が得られた.
(1) 発酵温度は13±5°Cとやや低温であったが, 使用酵母は, 良好な生育状態を示した. OC-2, W3の混合酵母はアルコール生産がややER酵母に比較して早いが, 生産量は同じで, その生育状態にも余り相違はみとめられなかった.
(2) アルコール生成と酵母生育の両パターンはよく似ていた. アルコールの主生産期は15~20日間位で, 発泡が始まって, 10日間以内が最大の生産期であった. 糖の消費も上記の期間に起こり, 補糖をショ糖でするか,ブドウ糖でするかで, やや糖の消費パターンに相違があった. また果糖はショ糖, ブドウ糖に比較して遅く消費された.
(3) 滴定酸やpHは余り変化しなかったが, リンゴ酸は減少し, 乳酸が増加することから, マロラクチック発酵が生じていると考えられた.
(4) フーゼル油, メタノールはそれぞれ0.5g/l,0.15g/l生産され, またエステルは300mg/lとブドウ酒とよく似た量であった. しかしグリセロールは0.59/lとブドウ酒より格段に少なかった.