園芸学会雑誌
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57 巻, 1 号
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  • 井上 宏, 原田 豊
    1988 年57 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カラタチ台ウンシュウミカン(興津早生) の1年生樹を環境制御室の15, 20, 25及び30°C室に搬入し, 昼夜恒温の条件下で7~9か月間栽培し, 樹体の生長と養分吸収の温度条件を観察した.
    1. 素焼鉢 (直径30cm) に植え付けた供試樹を,1979年4月1日に環境制御室に搬入し, 10月下旬まで栽培した. 高温区ほど春枝の発芽が早かったが, 15°C及び20°C区では春枝が発生したのみで, 夏枝はほとんど発生せず, 春枝上に9~10月に花蕾の発生をみた. 一方,25°C区では春, 夏, 秋枝が発生し, 30°C区では秋枝に続いて第4サイクルの新梢まで発生した. 総新梢伸長量は30°C区が最も優れた. 掘り上げ時の生体重及び乾物重は, 地上部, 地下部とも高温区ほど優れたが, 30°C区では幾分25°C区より劣った。葉中要素含有率はN及びPが20°C区で最高値を示し, K及びCaは高温区ほど高かった. 15°C区ではいずれの要素も最も低かった.肥料要素吸収量は高温区ほど大となり, 30°C区では25°C区より若干劣った.
    2. 根箱 (30×20×25cm) に植えつけた供試樹を,1982年4月より環境制御室に搬入して9か月間栽培し,根の生長状態を観察した. 高温になるほど根の生長は促進した. 30°C区では樹は急速に発育し, 新梢生長は5サイクル, 根の生長には3サイクルがみられた. 一方,15°C区の樹の根の生長は極端に抑制された. すべての場合, 新梢の生長が根の生長に先行した. 根の生長は春枝及び夏枝発生後に著しく, 15°C区を除いて2つの明瞭なピークを示した. 20°C以上の区ではほぼ同じ根の生長のパターンを示したが, 15°C区では緩慢に, ピークを示さず, わずかに伸長した. 実験終了時の根の長さは高温区ほど大であった.
  • 山田 昌彦, 池田 勇, 山根 弘康, 平林 利郎
    1988 年57 巻1 号 p. 8-16
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    旧園芸試験場における30年間にわたるカキ育種調査成績を取りまとめ, カキのへたすきと果頂裂果の遺伝様式を検討した.
    1. 在来品種122品種の調査成績から, PCNA品種群は他のタイプと比べて特異的にへたすき性と果頂裂果性を持っていることが明らかとなった. へたすき性と果頂裂果性はPVNA, PVA及びPCA品種群の間に顕著な差はなかった.
    2. へたすき性を持たない品種間の交雑からは, ほとんどがへたすき性のない後代が生じた. へたすき性を持つ品種間の交雑, 及びへたすき性を持つ品種と持たない品種との交雑からは, へたすき性の強い後代からない後代まで幅広く分離した. このことから, 育種的には, へたすきを生じさせない遺伝子についてへたすき性を持つ品種はヘテロ, へたすき性のない品種はホモと考えるのが有効であると思われた.
    また, へたすきのない後代の出現率と平均親値の間にはr=-0.64**または-0.54**の相関が認められ, 平均親値は望ましい後代の出現率を予測する指標となると思われた.
    3. 果頂裂果の遺伝様式はへたすきとほぼ同様であった. 果頂裂果のない後代の出現率と平均親値との相関は, r=-0.68**または-0.76**であり, へたすきよりも高かった.
    4. 系統適応性検定試験に供試されたPCNAの選抜系統は, かなり高い頻度でへたすき性および果頂裂果性を持っていた. PCNAの育種の過程では, へたすきまたは果頂裂性を持つ後代がかなりの頻度で生じるため, 選抜過程ではその遺伝的特性を的確に把握する必要があると考えられた.
  • 白石 眞一, 渡部 由香
    1988 年57 巻1 号 p. 17-21
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    4倍体の黒色ブドウ品種, ‘ピオーネ’, ‘伊豆錦’, ブラックオリンピアについて, アントシアニン色素を1%塩酸酸性メタノールで抽出し, 塩基性酢酸鉛法によって精製し薄層クロマトグラフィー法で分離した. それぞれのアントシアニン色素の同定は, Rf値, モリブデン試薬による反応, 可視光線, 紫外線下でのスポットの色調反応により行った.
    すべての品種に, モノグルコシド, ジグルコシド, 及びクマール酸のアシレートした色素が含まれていた.‘ブラックオリンピア’には, デルフィニジン, ペテユニジン, マルビジンの3-モノグルコシドとそのアシル化色素, およびマルビジンの3, 5-ジグルコシドとそのアシル化色素の計8種のアントシアニンが存在した.
    ‘伊豆錦’には10種のアントシアニンが存在し, ‘ブラックオリンピア’に含まれる8種のアントシアニンに,ペテュニジン, デルフィニジンの3,5-ジグルコシドのアシル化色素が加わった色素構成であった.
    ‘ピオーネ’は14種のアントシアニンを含み, ‘伊豆錦’にシアニジン, ペオニジンの3-モノグルコシド, ペテュニジン, デルフィニジンの3,5-ジグルコシドが加わった色素構成であった.
    ‘ピオーネ’中のアグリコンは, マルビジン, デルフィニジン, ペテュニジンの順に減少し, 少量のシアニジン(5%). ペオニジン(4%) が存在した. ‘伊豆錦’と‘ブラックオリンピア’のアグリコンは同一で, シアニジン,ペオニジンを欠いていた.
  • 水谷 房雄, 廣田 龍司, 門屋 一臣
    1988 年57 巻1 号 p. 22-27
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    モモの根に含まれる生長抑制物質がβ-シアノアラニン合成酵素活性に及ぼす効果について調査した. モモの根のアルコール抽出物を溶媒抽出法で種々の分画に分けて, それぞれの分画中の縮合性タンニン含量と酵素活性の抑制度を比較したところ, 両者の間には正の相関があった. 最も縮合性タンニン含量が高く, 酵素活性の抑制度の大きかった酢酸エチル可溶中性分画を更に SephadexLH-20カラムクロマトグラフィで分離したところ, 縮合性タンニン含量が高い溶出分画でイネ実生の生長抑制効果が大きく, β-シアノアラニン合成酵素の活性も抑えられた. モモの根から抽出精製した生長抑制物質である biflavanols のうちの一つについて, 酵素活性に及ぼす効果を調べたところ抑制効果が認められた. これらの結果から, 青酸化合物を有する植物では, β-シアノアラニン合成酵素の活性が抑制されると正常な青酸代謝が阻害され, そのために組織中に青酸が蓄積するものと推測された. モモのいや地をアレロパシーの観点から見ると, 前作のモモの根に由来する生長抑制物質が後作のモモの根の青酸代謝を阻害することによって青酸が生じ,これが後作のモモの生育阻害を引き起こしていると思われた.
  • 宇都宮 直樹
    1988 年57 巻1 号 p. 28-33
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    数種のグァバ類実生において, それらの耐寒性の違いと耐寒性に及ぼす水ストレスの影響について比較調査を行った. その結果, -5°Cにおける耐寒性は Pididiumcattleianum var. lucidumP. guineense で強く,P. polycarpumP. friedrichsthalianum では著しく弱く, P. guajava は両者の中間であった. 10月からの2か月間の水ストレスはいずれの種においても葉の水ポテンシャルを低下させたが, その耐寒性増大効果 P.cattleianum var. lucidumP. guineenseにおいて特に著しかった. 一方, P. polycarpumP. friedrichsthalianumではその効果がほとんど見られなかった.
    本実験では更に, 水ストレスの強さや処理時期の違いがグァバ (P. guajava) 実生の耐寒性にどのような影響を及ぼすかについても調査した. その結果, 水ストレスが強くなり葉の水ポテンシャルが低下するほど耐寒性が増大する傾向が見られた. 水ストレスを10月及び12月から開始したそれぞれの個体では葉の水ポテンシャルが約-30barまで低下し, 耐寒性は著しく増大した. しかし, 8月から水ストレスを与えた個体では同じように水ポテンシャルは低下したが, 耐寒性は増大しなかった.なおこのような水ストレスによるグァバ実生の耐寒性増大効果は-5°Cでは認められたが, -7°Cでは認められなかった.
    本実験では, 水ストレスによって耐寒性が増大した個体では, 葉中の糖濃度が増加する傾向が見られた. プロリン濃度も水ストレスによって増加する場合が見られたが, これらの成分変化と耐寒性増大との関係を明確にすることはできなかった. また, グァバ類の耐寒性における種間差異と葉中の糖及びプロリン濃度の種間差異とには関連がなかった.
  • 郭 秀年, 藤枝 國光
    1988 年57 巻1 号 p. 34-42
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ニホンカボチャの未受精胚珠培養で不定胚形成とその組織学的研究を行った.
    開花当日の子房を5°Cで2日間前処理して摘出した.
    未受精胚珠は, MS (Murashige-Skoog) の1/2量無機塩類, 全量有機物, しょ糖3%組成からなる液体培地での静置培養で, 17%が不定胚を形成した.
    未受精胚珠の胚嚢は培養の初期に退化が始まった. 培養10日目ごろから, 大きな核と濃厚な細胞質, そして厚い細胞膜をもつ珠心細胞が目立つようになり, これらが分裂して前胚を形成した. その後, この前胚は分裂を続け, 接合子胚に似た経過で, 球状期, ハート状期をへて子葉期の胚へと発達した. しかし正常胚は少なく, 二次胚や奇形子葉を付けた異常胚が多かった.
    これらの不定胚を, 同じ組成 (ただししょ糖0.5%)の固体培地 (寒天0.8%) で継代培養を行った. その結果, 多くはカルス化し, 正常に育ったのは数個体にすぎなかった. これら再生植物は2倍体 (2n=40) と4倍体(2n=80) であった.
    以上のことから, ニホンカボチャの未受精胚珠培養で形成された不定胚は, 珠心組織の単細胞起源であることが示唆された.
  • 安谷屋 信一, 比嘉 照夫
    1988 年57 巻1 号 p. 43-51
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ミョウガ (Zingiber mioga Roscoe 2n=55) は日本原産の香辛野菜である. 種子稔性が低く, 交雑育種は困難である. 低い稔性の原因を究明するために, 花粉の発芽と花柱内の花粉管伸長力に及ぼす温度, 湿度および季節の影響を室内実験で検討した.
    人工培地上での花粉発芽の適温は10°C~15°Cであったが, 花柱内の花粉管伸長は20°C~25°Cにおいて勝れ,15°Cおよび30°Cでは抑制された.
    花粉発芽や花粉管の花柱内伸長力は湿度が高くなるほど増大し, 最適相対湿度は100%かそれに近い高湿度であった. 60%や80%の湿度条件下で短時間処理した花粉は, たとえ培地へ置床する前に, 100%湿度条件下に戻しても, もはや発芽力を回復することはなかった. 花穂を60%湿度に3時間おいた後に, 100%湿度下において受粉すると, 花柱内花粉管伸長は明らかに遅延した.
    花粉稔性と花柱内花粉管伸長力は1月が勝れた. 一方, 高温期の8月と9月は小粒不稔花粉が増え, また,花粉管伸長力も劣った. 6月は花粉稔性は1月と同等であったが, 花柱内花粉管伸長は劣った.
    要するに, 生育期が冷涼気候下にあり, 受粉時の温度が20°C~25°Cにあることと, 花粉および柱頭を取り巻く受粉時の環境が, 安定的に高湿度であることが, ミョウガの結実を促進する条件と考えられる.
  • 池田 英男, 大沢 孝也
    1988 年57 巻1 号 p. 52-61
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    空気中CO2濃度と照度が, そ菜のNO3あるいはNH4利用に及ぼす影響を検討するために,2種の水耕試験を行った.
    実験1ではCO2濃度を360, 800, 1300, 1800ppmとし, 培養液中のN源をNO3 (2,6,12me/l), NO3+NH4(6/2,6/6,6/12me/l), NH4 (1,2,6me/l) として, レタス, トマト, インゲンマメを3週間水耕した. 各そ菜の地上部生育はおおむねCO2濃度の増加に伴って良くなったが, レタス及びトマトは1800ppmでは1300ppmと同程度かそれより劣った. またいずれのそ菜もNO3単用より両N併用のほうが生育良好で, レタスではCO21300ppmの6/12で, トマトでは1300ppmの6/12ないし6/6で, インゲンマメでは1800ppmの6/2ないし6/6で最大の乾物重を示した. CO2施用による乾物増加についてNO3をN源とした場合とNH4をN源とした場合を比較すると, トマトでは後者のほうが大であった.
    実験2ではCO2処理に加えて, 光合成やNO3の吸収および還元に強く影響する光強度を, 40%遮光処理によって変えた場合について, キュウリ, トマト, ホウレンソウを供試して検討した. いずれのそ菜も遮光区は無遮光区より生育が劣った. また無遮光区では, 各そ菜ともCO2施用による乾物増加が顕著に認められたが, 遮光区ではホウレンソウにおけるCO2施用効果は小さかった.
    NO3のみをN源とした場合, CO2 360ppmにおけるそ菜の生育は, 無遮光区では2<6=12me/l, 遮光区では2=6=12me/lとなり, 培養液中のN濃度を高めても生育量はあまり増加しなかった. しかしCO2 1300ppmでの生育は, いずれの光強度でも2<6<12me/lの順で,培養液中のN濃度を高めると良くなった.
    各そ菜ともCO2施用による乾物増加の程度は, NO3よりもNH4をN源としたほうが大であり, 遮光による生育低下の程度はNH4のほうが小さかった.
    以上のように, そ菜の生育はNO3とNH4の併用とCO2施用により促進されたが, これら二つの要因は相乗効果を示さなかった. 各そ菜の生育は, NO3がNH4よりも優れたが,CO2施用による乾物増加の程度はNH4のほうが大の場合が多く, 遮光による生育低下の程度はNH4のほうが小であった. なお実際栽培でCO2施用効果を期待するためには, 培地中のN濃度をある程度高くする必要があると判断した.
  • 池田 英男, 大沢 孝也
    1988 年57 巻1 号 p. 62-69
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    培養液のNO3/NH4比と温度がトマト‘TVR-2号’の生育, 収量ならびに尻腐れ果発生に及ぼす影響について検討するために, 実用規模に準ずる大型水耕装置を用いて実験した. 実験は2年間にわたり, それぞれ春~夏(春作) と夏~冬 (秋作) の2回ずつ行った. 1年目は2種類のN処理 (me/l比でNO3/NH4=12/0と9/3) と5段階の液温 (15,20,25,30,35°C) を組合せた10区を設けた. また2年目はNO3/NH4=12/0, 10/2, 8/4, 6/6(me/l比) の4種のN処理と, 低温区 (18°C), 高温区(28°C) 及び液温を調節しない放任区の3種の液温を組合せた12区を設けた.
    1. 1年目の春作における植物体生育は, 20°C以上では9/3区が12/0区を明らかに上回った. またいずれのN処理とも25°Cが最も生育良好であり, それ以下でも以上でも生育は不良となったが, 特に9/3区の15°Cでの生育不良は著しかった. 12/0区では液温が高くなっても尻腐れ果の発生率は5~7.5%と低く, 健全果収量は高かった. 一方9/3区の健全果収量は12/0区より例外なく低く, 特に25°C以上での両区の差が目立った. 9/3区の尻腐れ果発生率は20°Cまでは30%程度で, 25°C以上では液温が高くなるにつれて発生率も高くなった. これと関連して9/3区の葉中Ca濃度は12/0より明らかに低かったが, 特に25°C以上での低下が目立った. 秋作は初期収量のみの結果であるが, いずれの液温でも収量は9/3区が12/0区を明らかに上回った.
    2. 2年目の春作における植物体生育は, 高温区ではN形態の影響がほとんど認められず, 低温区及び放任区では6/6でのみ生育低下が認められた. これに対し, 尻腐れ果の発生率は低温区, 高温区とも12/0では低く,NH4の比率が高まるにつれて著しく高くなり, 健全果収量は逆に低下した. また放任区では6/6でのみ尻腐れ果の発生が多く, 収量低下が認められた. 秋作での植物体の生育は, 低温区の場合12/0が最も劣り, 両N併用はそれよりかなり良かった. しかし高温区ではNH4の比率が高まるにつれて生育不良となり, 特に6/6で著しかった. また放任区では8/4まではNH4の比率が高まるにつれて生育量も増加した. 秋作における尻腐れ果発生率は春作に比べると大幅に低下し, 低温区の6/6でのみ10%以上となったものの, 他の区ではほとんど発生が見られなかった. そのために健全果収量は植物体の生育と同様な傾向を示し, 両N併用がNO3単用を上回る場合が多かった. 秋作における葉中Ca濃度は, 培養液中のHN4の比率が高くなるにつれて明らかに低下したが,生育あるいは尻腐れ果発生との関連性は明らかではなかった.
    3. 以上の結果より, 春作後半の気温•液温が高くなる時期のトマト栽培では, NO3とNH4の併用はNO3単用よりも植物体の生育を多少促進するとしても尻腐れ果の発生を増加させるので, この時期にはむしろNH4を全く含まない培養液で栽培するほうが尻腐れ果の発生を少なくできて良いこと, および秋から春にかけて尻腐れ果の発生しにくい時期の栽培では, 液温は余り高くせずに, NH4をある程度積極的に施用することによって,植物体の生育を良くし, あるいは樹勢を維持して健全果収量を高めることができること, などが考えられる.
  • 藤目 幸擴, 斎藤 良光, 中山 恭伸
    1988 年57 巻1 号 p. 70-77
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブロッコリーの早晩生の異なる13品種を用い, 生育温度 (17°C~23°C) と日長条件 (8時間日長と16時間日長)を組合せ, 花らい形成に対する低温と長日の相乗作用における品種間差異について調査した.
    1. 極早生の‘極早生緑’と‘グリーンコメット’は短日条件下で花らいを形成しない温度でも, 長日条件下では花らいを形成した. 早生の‘シャスター’, ‘緑洋’と‘里緑’, 中生の‘緑山’も, 短日条件下で花らいが形成されない温度であっても, 長日条件下では花らいを形成した.
    2. 同じ生育温度の両日長条件下で花らいが形成された場合, 極早生の‘極早生緑’と‘ダークホース’, 早生の‘早生緑’, ‘シャスター’と‘緑洋’, 中生の‘スリーセブン’は, 長日区の方が短日区より1週間早く花らいを形成した.
    3. 同じ生育温度の両日長条件下で花らいが形成された場合, 早生の‘早生緑’と‘シャスター’, 中生の‘緑嶺’と‘スリーセブン’は, 長日条件下の方が短日条件下より少ない葉数で花らいを形成した.
    4. 以上の結果から, 供試した13品種中の10品種について, 花らい形成に及ぼす低温と長日の相乗作用が認められ, 長日条件下では花らい形成の上限温度の高くなることが認められた. 更に, ブロッコリーの花らい形成に対する低温と長日の相乗作用において, 低温が主要因であり, 長日条件は副次要因であると判断される.
  • 田中 豊秀, 松野 孝敏, 桝田 正治, 五味 清
    1988 年57 巻1 号 p. 78-84
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本試験は培養液の濃度と培養土がファレノプシスPhalaenopsis hybrid, ‘(Dtps. Red Lip×Phal. RedEye)×Phal. Culmination’ の生長と化学組成に及ぼす影響を調べる目的で行なったものである.
    1. ボラ+ピートモス(3:1)混合土に植えたファレノプシスに窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの濃度がそれぞれ231, 46.5, 117.3, 80.1, 12.2ppmである培養液を標準培養液とし,その1/3, 2/3, 1,4/3倍の濃度の培養液を与えた。標準培養液によるファレノプシスの生長がよかった. 4/3倍濃度の培養液では葉の生長はもっともよかったが, 開花が遅れた. 培養液の濃度が高くなるにしたがって葉の窒素とカリウムの含有率が高くなったが, カルシウム, マグネシウムの含有率が低下した.
    2. ファレノプシスを6種の培養土に植え, 標準培養液1/3倍の濃度の培養液で栽培した. 使用した培養土は次の通りである: ボラ+ピートモス(1:1)混合土, 同(2:1) 混合土, 同(1:1)混合土, ヘムロックバーク,レッドウッドバーク, 水ごけ.
    水ごけ区のファレノプシスの生長はよかった. 葉の窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの含有率は対乾物当りそれぞれ1.74, 0.18, 4.42, 1.13, 0.48%で, マグネシウムが少なかった.
    ボラ+ピートモス(1:1)混合土区のファレノプシスは水ごけ区のものに比べ, 生長がややよく, 開花も早かった. 葉の窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの含有率はそれぞれ1.36, 0.18, 2.20, 1.34,1.75%であった. ボラ+ピートモス(3:1)混合土と同(2:1)混合土のファレノプシスはボラ+ピートモス(1:1)混合土区のものに比べ生長と開花が劣った.
    ヘムロックバーク区のファレノプシスは葉の生長は最もすぐれたが, 根の生長が劣り, 開花が遅れた. 芽の窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの含有率はそれぞれ2.93, 0.24, 4.49, 0.52, 0.32%で, 窒素とカリウムの含有率は高かったが, カルシウムとマグネシウムは低かった.
    レッドウッドバークで栽培したファレノプシスは生長, 開花とも最も劣った. 葉のカルシウム, マグネシウム含有率が低かった.
  • 田中 豊秀, 松野 孝敏, 桝田 正治, 五味 清
    1988 年57 巻1 号 p. 85-90
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本試験は培養液の濃度と培養土がカトレア Cattleya hybrid, C.Ray Park×Lc.Oakland‘MARIA’AM/AOSの生長と化学組成に及ぼす影響を調べる目的で行ったものである.
    1. ボラに植えたカトレアに窒素, リン, カリウム,カルシウム, マグネシウムの濃度がそれぞれ231, 46.5,117, 80.1, 12.2ppmである培養液を標準培養液とし,窒素, リン, カリウムの濃度を1/3, 2/3, 1, 4/3倍とした培養液を与えた. カルシウム, マグネシウム, 微量要素は同じ濃度とした. 標準培養液によるカトレアの新鮮重増加率がもっとも大きかった. 4/3倍濃度の培養液で根の生長がやや抑えられた. 培養液の濃度の増加にともない葉中の窒素, リン, カリウムの含有率が高くなる傾向があった.
    2. カトレアを5種の培養土に植え, 標準培養液の1/3倍濃度の培養液で栽培した. 使用した培養土は次の通りである: ボラ+ピートモス(3:1)混合土, 同(2:1)混合土, 同(1:1)混合土, ヘムロックバーク, 水ごけ.
    ボラ+ピートモス(1:1)混合土植えのカトレアは新鮮重増加率が高かった. 根の生長もよかった. 葉の窒素,リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの含有率はそれぞれ1.20, 0.17, 1.86, 1.14, 0.92%であった.
    水ごけ植えのカトレアはボラ+ピートモス(1:1)混合土のカトレアに比べ根の生長がわるく, 株全体の新鮮重増加率も低かった. 葉の窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの含有率はそれぞれ1.26, 0.18,2.11, 1.10, 0.57%で, マグネシウムの含有率がボラ+ピートモス(1:1)混合土植えのカトレアより低かった.
    ヘムロックバーク植えのカトレアの葉は濃緑色で外観はよかったが, 水ごけ植えのカトレアと同様, 根の生長がわるかった. 葉の窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの含有率はそれぞれ1.49, 0.19, 2.44,0.87, 0.50%で, 水ごけ植えのカトレアと同様マグネシウムの含有率が低かった.
  • 山口 雅篤, 寺原 典彦, 筧 三男, 雫石 賢一
    1988 年57 巻1 号 p. 91-100
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    紫赤色カーネーションの園芸品種の‘ニーナ’を用い,その花弁に含まれるアントシアニンを分離精製して同定を行った. また, この色素の分布を紫赤色の園芸品種及び育成系統について調査した.
    1. ‘ニーナ’の花弁に含まれる主要なアントシアニンは, 赤色針状の結晶として単離され, その構造は, 化学分析によってシアニジン3-マリルグルコシド(Cy3-MG) と同定された.
    2. このCy3-MGは, 今回調査した紫赤色カーネーションの園芸品種及び育成系統の計25種類のすべてにおいて, 主要な色素として検出された.
    3. 赤色カーネーションからペラルゴニジン3-マリルグルコシド (Pg3-MG) が同定されており, また, 紫赤色カーネーションからCy3-MGが同定されたことから, アントシアニンのマリル化はカーネーションに特徴的であることが強く示唆された.
  • 吉田 保治, 山田 友紀子, 上田 茂登子, 伊東 卓爾, 泉 秀美
    1988 年57 巻1 号 p. 101-108
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンの用途を拡大する目的で, ミカンワインの試験製造を行った. アルコール発酵期間中のもろみの数種性状の変化を調べ, 次のような結果が得られた.
    (1) 発酵温度は13±5°Cとやや低温であったが, 使用酵母は, 良好な生育状態を示した. OC-2, W3の混合酵母はアルコール生産がややER酵母に比較して早いが, 生産量は同じで, その生育状態にも余り相違はみとめられなかった.
    (2) アルコール生成と酵母生育の両パターンはよく似ていた. アルコールの主生産期は15~20日間位で, 発泡が始まって, 10日間以内が最大の生産期であった. 糖の消費も上記の期間に起こり, 補糖をショ糖でするか,ブドウ糖でするかで, やや糖の消費パターンに相違があった. また果糖はショ糖, ブドウ糖に比較して遅く消費された.
    (3) 滴定酸やpHは余り変化しなかったが, リンゴ酸は減少し, 乳酸が増加することから, マロラクチック発酵が生じていると考えられた.
    (4) フーゼル油, メタノールはそれぞれ0.5g/l,0.15g/l生産され, またエステルは300mg/lとブドウ酒とよく似た量であった. しかしグリセロールは0.59/lとブドウ酒より格段に少なかった.
  • 傳 炳山, 一井 隆夫, 中西 テツ, 河合 義隆
    1988 年57 巻1 号 p. 109-115
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究は晩生カンキッの一つであるナルトミカン果皮フラベド組織の脂質の季節的変化を調べた.
    果実重は11月上旬まで増加し, その後の変化は少なかった. 着色は10月下旬頃から始まり, 2月に最も紅色が濃くなったが, 以後回青の傾向を示した.
    リン及び糖脂質の脂肪酸総量, とくに糖脂質の総量は果皮の成熟に伴って, 著しく減少した. ただし, 厳冬期(2月) にはとくに高度不飽和脂肪酸の著しい増加がみられた. 中性, リン脂質は主にリノール酸 (18:2), 糖脂質はリノレイン酸 (18:3) の増加によるものであった.
    主要リン脂質であるPC, PE及び主要糖脂質であるDGDG, MGDG量はそれぞれリン及び糖脂質の総量 (脂肪酸総量) と平行して変化した. DGDGの季節的変化はMGDGより大きかった.
    PC/PEの比は8月から12月までに漸減し, その後一定であった. 遊離ステロールの量は8月から10月にやや減少し, 厳冬期にピークがみられた. しかし, ステロール/リン脂質の比は冬期中, ほとんど変化がみられなかった. 成熟期 (12月から6月) のシトステロール/スチグマステロールの比は生育期 (8月から10月) に比べ.2倍以上に達した.
  • 松尾 友明, 岡 佳子, 伊藤 三郎
    1988 年57 巻1 号 p. 116-121
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    老化や生理障害の初期に見られるリーケージ現象の発生機構に関する知見を得るためにモデル実験として赤ビート切片にBHP処理を施して生じるベタシアニン色素のリーケージについて研究しているが, 本実験ではBHP処理と同時にか, あるいは処理後に種々の薬剤を浸漬液に添加して, それらの影響を検討した. そして,それらに基づいてBHPのリーケージ誘発機構を推論した.
    1. 前報に準じた実験条件において, 赤ビート切片を10mM BHPで8時間処理すると, その後BHPを含まない浸漬液中でベタシアニン色素のリーケージ (OD540nmの増加) が顕著に観察された. 各ロットにより多少違いが見られるが, その吸光度は5~7時間後には約1.0に達した.
    2. 5mM DEDTC-Na, 20mMチオ尿素, 5.0mM(+)-カテキン, そして, 1mM n-プロピルガレートはBHP処理と同時に添加すると, それぞれ極めて効果的にベタシアニン リーケージを抑制した.
    3. 5mM L-システインと5mM D-アスコルビン酸も有意に抑制効果を示した.
    4. 5mM (+)-カテキン, 10mMシステイン, 20mMチオ尿素はBHP処理後に浸漬液に添加しても540nmの吸光度の増加を抑えた.
    5. BHP処理と同時に5mM EDTA, あるいは2.5mM FeCl3の添加は著しくベタシアニン リーケージを促進した.
    以上の結果から, BHPは赤ビートの組織内で鉄イオンのような未知要因によってラジカルに変換され, ベタシアニン色素のリーケージを誘発するものと推測した.
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