抄録
ニホンカボチャの未受精胚珠培養で不定胚形成とその組織学的研究を行った.
開花当日の子房を5°Cで2日間前処理して摘出した.
未受精胚珠は, MS (Murashige-Skoog) の1/2量無機塩類, 全量有機物, しょ糖3%組成からなる液体培地での静置培養で, 17%が不定胚を形成した.
未受精胚珠の胚嚢は培養の初期に退化が始まった. 培養10日目ごろから, 大きな核と濃厚な細胞質, そして厚い細胞膜をもつ珠心細胞が目立つようになり, これらが分裂して前胚を形成した. その後, この前胚は分裂を続け, 接合子胚に似た経過で, 球状期, ハート状期をへて子葉期の胚へと発達した. しかし正常胚は少なく, 二次胚や奇形子葉を付けた異常胚が多かった.
これらの不定胚を, 同じ組成 (ただししょ糖0.5%)の固体培地 (寒天0.8%) で継代培養を行った. その結果, 多くはカルス化し, 正常に育ったのは数個体にすぎなかった. これら再生植物は2倍体 (2n=40) と4倍体(2n=80) であった.
以上のことから, ニホンカボチャの未受精胚珠培養で形成された不定胚は, 珠心組織の単細胞起源であることが示唆された.