抄録
袋かけと関連して, リンゴ4品種 (‘ふじ’, ‘紅玉’,‘スターキング•デリシァス (SD)’‘ゴールデン•デリシァス (GD)’)の果皮のアントシアニン含量, 総フェノール含量, PAL活性, 及び果実のエチレン排出量と果実内エチレン濃度を経時的に調査した.
PAL活性は, いずれの品種でも幼果期に高く, その後一旦低下した後, 成熟期に再び上昇した. その再上昇の時期はそれぞれの品種のアントシアニン生成の開始期及びエチレンの発生期 (climacteric rise) にほぼ一致した. 成熟期のPAL活性は, アントシアニン生成の多い‘紅玉’や‘SD’で高かったが, ほとんどアントシアニン生成のみられない‘GD’でもかなり高かった.
袋かけとその後の除袋により, 赤色品種では一時的に良好な着色がみられたが, 最終的なアントシアニン含量は無袋果実と変わらなかった. 除袋時に紫外線除去フィルム袋にかけかえると, 赤色品種のアントシアニン生成は顕著に抑制された.果実のエチレン濃度と生成量は, 個体間で大きく変化したが, 袋かけなどによる処理間では, 差がみられなかった.
PAL活性は, ‘SD’では有袋区と紫外線除去区で抑制され, アントシアニン生成量との間に平行関係がみられた. しかし, 他の品種では有袋区でもかなりの活性がみられ, 処理区間によるで一貫した傾向は認められなかった.
以上の結果から, リンゴ果実のアントシアニン生成にPAL活性の上昇は必要条件ではあるが, 十分条件とは成り得ないように思われた.