抄録
本試験は培養土と肥料を異にして栽培したカトレアCattleya hybrid, Lc. Pacific South×Bc. Deesse, の生長と養分吸収について比較検討したものである.
1. 水ごけに植え, 油粕+骨粉 (1:1, 容積比) 混合物を1個体に2.5gずつを新茎の生長期に3回 (窒素376.5mg) 与える, いわゆる慣行栽培によるカトレアはよく生長した. 窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの施与量に対する吸収量の割合はそれぞれ19.3, 2.7, 149.7, 16.5, 85.2%であった.
2. 水ごけの代わりにボラ+ピート (1:1, 容積比) 混合土に植え, 油粕+骨粉混合物を1個体に2.5gずつを3回与えたカトレアも慣行栽培のカトレアと同程度に生長した.
3. ボラ+ピート (1:1) 混合土に植え, 窒素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウムの濃度がそれぞれ231, 46.5, 117.3, 80.1, 12.2ppmの濃度の標準培養液を20mlずつ40回 (窒素184.8mg) 与えたカトレアは慣行栽培のカトレアと同程度によく生長した. 窒素とリンの施与量に対する吸収量の割合はそれぞれ45.9, 39.8%であったが, カリウム, カルシウム, マグネシウムについてはそれぞれ226.6, 208.8, 804.3%であった. 培養液のカリウム, カルシウム, マグネシウムの濃度を高くしてカトレアの生長に適した培養液に改良する必要がある. 標準培養液の1/3の濃度の培養液では生長がやや劣った.
4. ヘムロックバークに植え, 標準培養液で栽培したカトレアも慣行栽培のカトレアの同程度によく生長した. 各要素の施与量に対する吸収量の割合はボラ+ピート (1:1) 混合土のカトレアの場合と同程度であった.
5. 窒素, リン, カルシウム, マグネシウムは全体の23~27%が新茎に存在したのに対し. カリウムは約43%が新茎にあった. 油粕+骨粉混合物だけに依存した施肥では新茎の生長に必要なカリウムが不足することが考えられる.