園芸学会雑誌
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寒冷地におけるニンニクの生育の様相と春植え栽培
高樹 英明
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1989 年 58 巻 1 号 p. 139-147

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抄録

寒冷地における秋植え及び春植えニンニクの生育の様相と春植え栽培の理論•方法を生態生理学的に検討した.
1. 秋植えニンニクの秋季の茎葉の生長量は品種によって著しく異なり, 寒地型品種は暖地型品種より秋季生長量が少なく, 寒地型品種の中でもより晩生の品種は生長量が一層少なかった.
2. 春植えニンニクの収穫期は秋植えニンニクとあまり差がなかったが, 寒地型品種の春植えニンニクの球肥大生長は同品種の秋植えのものより遅くまで衰えずに続いた.
3. 春植えニンニクは地上部が秋植えニンニクより一般に小型になり, 収穫球重も減少したが, 寒地型品種はその差が暖地型品種より小さく, 寒地型品種の中でもより晩生の品種はその差が一層小さかった.
4. 春植えニンニクでは中間型球や一りん片球が形成されたが, これらの異常球発生率は品種によって著しく異なった. 暖地型品種は発生率が高く, 寒地型品種は低かったが, 寒地型品種の中でもより晩生の品種は一層低く, 発生のみられない品種もあった.
5. 春植え用種球を-2°Cで貯蔵すると軒下で貯蔵するより収穫球重が増加したが, この効果は種球の軒下貯蔵から-2°C貯蔵に移行する時期の影響が大きかった. 寒地型晩生品種では初冬季ごろまでは移行時期の遅いほど多収になり, それ以上遅くなると漸次減収した.
6. 寒冷地でのニンニクの春植え栽培は, 秋植えで秋季の生長量の少ない, 大球を生産する寒地型晩生品種を用いれば, ニンニクの生態生理からみて不都合の少ない作型であると考えられた.

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