園芸学会雑誌
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バラの花粉外壁の形態計測分析
上田 善弘富田 裕明
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1989 年 58 巻 1 号 p. 211-220

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抄録

バラの系統関係を明らかにするため, 31種, 21変種,15種間交雑種および58品種のバラについて走査型電子顕微鏡により花粉全体と花粉外壁を観察した. さらに,これらの走査型電子顕微鏡像から6つの形質を量的に計測し, これらの計測値により主成分分析を行った.
バラの花粉表面上にはウネ (ridge) と微散孔 (perforation)が認められ, それらは種間および品種間で幅広い形態的変異を示した. ウネと微散孔の特徴により,花粉表面構造に6つの型が認められ, そのうち3つの型はさらにそれぞれ2つに分けられた. 一般に, バラの植物学上の節と園芸品種の系統群は特有の表面模様を示し,これらの模様は交雑後代に伝達されていることが分かった. 特にピンピネリフォリア (Pimpinellifoliae) 節のほとんどの種は一つの特定の型 (Type I) を示し, この表面模様はピンピネリフォリア節に関連した品種に伝達されていた.
主成分分析の結果, 第一主成分は因子負荷量の大きさから花粉の大きさに関する因子とみなされ, この主成分によって高倍数性の種, ハイブリッド•ティー (HT)およびフロリバング (F) 系統の品種を低倍数性の種やHT およびF以外の系統から分けることができた. 第二主成分は微散孔に関する因子とみなされ, ピンピネリフィリア節の種とこの節に関連した品種を他の節や系統から分けることができた. 第三主成分はウネ径に関する因子とみなされ, インディカ (Indicae) 節の種とこの節に関連した品種を他の種および品種から分けることができた.
花粉表面の微細構造の観察はバラの節または系統群を分類するのに有用な一手法であると考えられる.

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