抄録
キュウリの果実の着果•肥大に関連して光合成産物の転流と分配に及ぼすBA施与の影響を明らかにすると共にキュウリ果実の着果•肥大の生理的機作について検討した.
1. キュウリの着果及び初期肥大は受粉によって促進され, さらに, BA施与によって無受粉区も着果(単為結果)することが認められた.
2. 開花前後の花芽に対する光合成産物の分配は多くなく, その変化量は少なかったが, シンクとしての強さを表すRSS値には大きな変化が認められ, 開花当日に花芽のシンクの活性が低下し, その後, 受粉やBA施与によって, 再びシンク活性が高まることが認められた.
3. 受粉及びBA施与によるRSS値の変化のパターンとオーキシン含量の変化のパターンはほぼ同様であることが認められ, BA施与がオーキシン含量の減少を抑制するのではないかと推定した.
4. 14CでラベルしたBAを施与して, 14Cの移動をみると, 果実への移動は時間の経過と共に漸増し, その増加は果実基部から先端部へ濃度勾配を持つことから, BAの移動は他動的移動と推定した. しかしながら, 24時間後の果実への移動量は10%以上であり, ホルモン的作用は行えるものと推定した.
5. キュウリ花芽の開花前後の生理的変化は開花前では葉芽の様な分裂組織を持った生長点と同様の活性を維持しているが, 開花当日から受精までの間は生理活性を一時的に低下し, 着果した後, 再び生理活性が高まり, 果実は急激に肥大することが認められた.