園芸学会雑誌
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ウンシュウミカンの開花誘導と生理的変化に及ぼす秋季の気温と地温の影響
ルディ プルワント井上 宏
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1990 年 59 巻 2 号 p. 207-214

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抄録

カラタチ台ウンシュウミカンの開花誘導と生理的変化に及ぼす秋季の気温と地温の影響を調査するため, 4実験を行った.実験I, IIでは4年生樹を, 実験III, IVでは1年生樹を供試した.
実験Iでは, ガラス室内で気温は自然状態に, 地温は15°C以下, 30°C以上と自然状態に, 12月1日までの3か月間維持した後, 環境制御室の30°C室に搬入し, 花蕾発生を観察した. 地温を15°C以下に保つと, 花蕾発生数が著しく増加し, 地温を30°C以上に保つと, 花蕾発生が激減した.
実験IIでは, 気温と地温を15°Cと30°Cの組み合わせで12月16日までの2.5か月間, 温度処理を行い, その後30°C室に搬入し, 花蕾発生を観察した. 気温が30°Cでも地温が15°Cでは若干の花蕾が発生したが, 地温が30°Cでは花蕾はまったく発生しなかった. 気温が15°Cでは多くの花蕾が発生したが, 地温が15°Cから30°Cに上昇すると, 花蕾数は減少した.
実験IIIは実験IIと同様に12月1日までの3か月間温度処理を行った後, 摘葉して25°C室に搬入し, 花蕾発生を観察した. また, 夏葉のジベレリン活性, 春葉の炭水化物, 窒素及び遊離型プロリンの含量を求めた. 花蕾発生は実験IIの結果と同様であった. ジベレリン活性はもっとも多く花蕾を発生した樹 (15°/15°C) で最低で, 花蕾を全く着けなかった樹 (30°/30°C) で最高であった. でん粉含量と窒素含量は地温の15°Cで30°Cより高く, 糖含量は差が見られなかった. C/N率は低地温処理で高かったが, 気温によっては影響されなかった.
実験IVは実験IIIの繰り返しであったが, 両実験とも花蕾発生数と葉の遊離型プロリン含量の間には正の相関があった.

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