園芸学会雑誌
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Lycoris 属の開花に及ぼす温度の影響
森源 治郎今西 英雄坂西 義洋
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1990 年 59 巻 2 号 p. 377-382

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抄録

1. 夏に開花する L. squamigera と秋に開花する L. radiata について, 花芽の形成及び発育に及ぼす温度の影響を発育段階ごとに詳しく調べた.
2. 両種ともに, 花芽の形成開始は10°~30°Cの範囲で認められたが, 適温は30°Cであった. また, 花芽形成開始から雌ずい形成期までの発育適温も30°Cであった.
3. 雌ずい形成期から花粉形成期までの適温は両種とも20°~25°Cであった. しかし, この適温下において,雌ずい形成期から花粉形成期に達するまでに要した期間は L. squamigera では4週であったのに対し, L. radiata では8週であり, 両種の発育速度に差異が認められた.
4. 花粉形成期から開花期に至るまでの適温も両種ともに20°~25°Cであった. これらの適温と比較した30°Cでの開花の遅れは,. L. squamigera では約10日であったのに対し, L. radiata では約1か月であり, 両種の間で高温抑制の程度に違いが認められた. なお, L. squamigera では10°~30°Cの温度範囲で開花したが L. radiata では20°~30°Cの温度でのみ開花に至った.
5. L. radiata の場合, 雌ずい形成期後は30°Cにおくと, 花芽の直接的な発育は抑制されるが, 3~5週間30°Cにおいた後20°Cに移すと, 連続して20°Cにおいたものに比べ開花が4~5週間早くなった.
6. L. radiata では花粉形成期前であれば, 15°Cに6週間おいても, その後20°Cに移すとすべて正常に開花したが, 花粉形成期前後であれば15°Cの期間が2週間でもまず葯が枯死し, 続いて花芽全体が枯死した.
7. これらの結果, L. squamigera の方が L. radiata に比べて, 雌ずい形成期後開花に至るまでの発育速度が早いうえ, 高温による開花抑制の程度が少ないという違いが, 両種の自然環境下における開花期に1か月の差異をもたらしていることがわかった.

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